こちらの一部レビューで言及のあった「松永訳」。とりあえず上巻だけ入手してみました。
葉隠 上 (教育社新書 原本現代訳 113) 新書 – 1980/7/1Amazonではよくある話ですが、2021.10.1現在、Kindle版として紐づけられているのは、まったく松永訳ではない別のエディションですね。というかそもそも現代語訳ですらありません。やはりこちらで不評だった”あの”エディション。お間違えのないように。
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『葉隠』(はがくれ)は、江戸時代中期(1716年ごろ)に出された書物。肥前国佐賀鍋島藩藩士・山本常朝の武士としての心得についての見解を「武士道」という用語で説明した言葉を田代陣基(つらもと)が筆録した記録である。全11巻。葉可久礼とも書く。
出版社 : ニュートンプレス; 新装版 (1980/7/1)
発売日 : 1980/7/1
言語 : 日本語
新書 : 314ページ
ISBN-10 : 4315401382
ISBN-13 : 978-4315401387
なるほど非常のこなれてスラスラ読める名訳。単に訳してあるだけでなく、適宜改行なども入れて読みやすくなっていますし、固有名詞にはこまめに()で補足が入れてあります。そのまま一気に通読できる仕様。
めんどくさければ、原文にこだわらず、本書だけ読んでおいても十分かと思いますし、やはり原文を味わわねば~とこだわる向きでも、まず最初にこの訳書に目を通しておけば、原文もスラスラ読めるようになるのではないでしょうか。
また、この上巻には巻頭に訳者による解説がありますが、これもまたすこぶるわかりやすい。
常朝の生涯とか本書の成立背景とか通り一遍の説明はもちろん、何といっても、有名な死ぬことと云々の本書の核心についても、これだけ的確なたとえをつかってスッキリ腑に落ちる説明というのは、他で読んだ記憶があまりないというレベル。
あまりにわかりやすすぎて、本書のまとっている神秘的なイメージが払拭されてしまうというか、そんな「普通」の内容なら、そこまでありがたがって読む必要があるのかないのか……と逆に困るレベル?
いつでも死ねる覚悟、死んでもいいと思って、たとえやけのやんぱちであろうと、度胸を決めてぶつかる、これが、「死ぬ事と見付けたり」である。何というか、こう…… 暗黒流体(https://amzn.to/2ZQxN7t)(https://amzn.to/39UkLYv)を返せ~~という感じですな(´・ω・`)
ずいぶん前のことになるが、ビルとビルの間に張り渡した綱を渡った綱渡師の話を何かの雑誌で読んだ記憶がある。恐ろしくなかったかと聞かれて綱渡師は、
「こわかったですよ。渡る前、今日はやめようかと思ったくらいです」
「しかし、すでにロープは張られている。見物人は集まっている。それで、目をつむってロープに足をのせました……」
(中略)
この目をつむって、なのだ。言いかえよう。「綱渡師というのは、落ちる事と見付けたり」
(中略)
落ちるのではないだろうか、死ぬのはいやだと思ったら、もうロープも見えなくなる。見えないロープは渡れない。落ちたら死ぬまでだ、と覚悟を決めたとき、ロープも頼りがいのある太いものに見えてくるのだ。
(中略)
このことからでも、「葉隠」が、ただ死に急ぎしろといっているのではないことがわかる。むしろ、危地におちいった者に、脱出法を教えているのだ。ここまでであったら、さして珍しいことでもない。死中に活を求めるといった言葉もある。
「葉隠」のすごさ、今日の私たちを圧倒してくるのは、この先である。
「図に外れて死にたらば、犬死気違なり。恥にはならず……」(一―二)
と、いっているところだ。
渡ろうか渡るまいか、確実に生きのびたいと思えば、綱渡りなどしないほうがいいにきまっている。しかし、綱渡師が綱渡りをやめたら、綱渡師でなくなる。ゆえに度胸をきめて渡らねばならない。不幸、途中で落ちて死んだとしても、それは失敗した不運な綱渡師であり、恥にはならない。だが、渡ることをやめた綱渡師は、生き恥さらしの臆病者となるのである。P14~16
カスタマーレビュー
5つ星のうち3.8
34 件のグローバル評価
星5つ…40%
星4つ…28%
星3つ…17%
星2つ…0%
星1つ…14%
こちらと同じですね💧
本書と、岩波文庫と、例のKindle版、(もしかしたらさらに別のエディションも?)のレビューが、ごちゃ混ぜになっています。
まあ、Amazonではたまにしばしばよくある話ですが……
とりあえず、前回チェックしたように、低評価はすべてKindle版の話なので、本書とは関係ありません。
>「これを電子書籍として出されても 読みにくくてかなわん」とのレビュー:Amazon
>「kindleで購入しましたが、すぐに読むの辞めてしまいました」とのレビュー:Amazon
>「端末はMacBookAir ですが非常に読みにくいです」とのレビュー:Amazon
>「原書をコピーした画像で読むのでとても読みづらい」とのレビュー:Amazon
☆3についても、古文が読みにくいとか、文字が小さいとか、岩波文庫版についての話が大半でしたし、つまるところ、本「松永訳」新書版については、おそらく、ほぼ高評価しかない、と、判断してよさそうでしょうか。
とりあえず、
>「この本は、珍しくほぼ全文現代語訳された葉隠本です」とのレビュー:Amazon
>「葉隠れの解説本を読むより、松永訳の葉隠(上・中・下)を直接読む方がはるかに面白い事請け合いである」とのレビュー:Amazon
>「まずは内容をざっと把握したいと思い、現代語訳を購入」とのレビュー:Amazon
などは明らかに、本松永訳についてのレビューですね。
大好評。
また、本書と岩波文庫と両方読んだ人というのもいるようで、レビューとしては岩波のほうに投稿されたものかもしれませんが、
いろいろな意訳本ではそれはやり過ぎでしょうというような訳があるのも確かですが、「葉隠」に対して愛情あふれるのは松永訳本ですね。おすすめです。岩波本は文字が小さすぎて、読ませるより研究者や図書館保存本であり、そういう意味においては最高です。だそうで、やはり、「松永訳本」がオススメ。
原文に挑戦するのももちろんヨイコトですが、背伸びをして玉砕しては元も子もありません。古文が得意な人はいいですが、そうでもない人は、まず本書から……というのが、無難というか、かなり良さげなのではないでしょうか?
新刊はとっくの昔に絶版でしょうが……古書はまだそれほど入手困難というわけでもなさそうですしね。。
Amazonほど多くはないですが、楽天にも多少の出品はあるでしょう、
「葉隠 原本現代訳」の検索結果:楽天
あと、全訳ではないのですが、松永氏による「葉隠」には、抄訳本もあるようです?
楽天ブックス:
・葉隠改訂新版 [ 松永義弘 ]
・葉隠 [ 松永義弘 ]
Amazon:「葉隠」の抄訳はいろいろたくさんあり、どこ部分をチョイスするかが腕の見せどころですが……全訳でなくてもいーやということであれば、どうせなら、松永氏のものを、という判断もありかもしれません。
・葉隠 単行本 – 2003/1/1
・葉隠 単行本 – 1992/7/1
いろいろ含めて、健闘を祈ります。
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