2021年09月01日

【読書】直木三十五「楠木正成」(歴史ノベルズ)

姉妹ブログからコピペ。



ビュー0件ですが、待っても増えるわけでなし。
もういいや、で取り上げておきます。


楠木正成 (歴史ノベルズ) 単行本 – 1990/12/1

出版社 ‏ : ‎ 鱒書房 (1990/12/1)
発売日 ‏ : ‎ 1990/12/1
言語 ‏ : ‎ 日本語
単行本 ‏ : ‎ 343ページ
ISBN-10 ‏ : ‎ 4895980081
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4895980081


書房ってどこや?と思ったら、
Wikipedia:インテルフィン
特記事項:旧社名・鱒書房→都山書房→ビデオ出版
諸行無常よのぅ。。
というか、出版社もまた、敗戦直後の志が維持できなくなっていく、売れなくなっていく、路線変更せざるをえない、という、そのこと自体、”戦後”という時代の有為変転のひとつの反映かもしれません?


戦この方、様々な価値観が転倒し、歴史は改竄され、荒唐無稽な嘘・捏造がまかり通るようになりましたが。
正成はじめ、歴史上の英傑の多くも、戦前・戦後で大きくその評価、毀誉褒貶が転変したわけで……
反日捏造史のカラクリが暴露されるにつれ、そうした「転変」にもおのずと興味は湧いてくるというか、戦前の”ぐんこくしゅぎ”に利用されたという、正成に対する戦後サヨクの誹謗中傷もまた、すこぶる胡散臭いものに思えてくるのは理の当然。
皇国史観が100点満点だったわけはありませんが、サヨク捏造自虐史観がマイナス百万点なのは間違いもなく、皇国史観を全否定することで、得られたものより、失われたもののほうがはるかに巨大ではないかというかナントイウカ……
そんなこんなで”戦前の正成”を読んでみたくていろいろ探して、ようやく見つけた、手頃な価格で入手できそうだった一冊。
しかも著者が直木三十五???
そういえば「直木賞」は有名ですが作品自体は読んだことないというかそもそもろくに本屋で見かけたことすらないですよねー、ということで一石二鳥。この作家自体、戦後、忘却され、むしろ封殺さえされてきたのだとしたら、それこそ、読んでみる価値ありかも?ということでさっそく入手してみたわけです。
(本当は https://amzn.to/38HXzw1 で言及されていた、武者小路実篤が書いたという子ども向けの正成伝を読みたかったのですが、Amazonや楽天で探しても影も形もなく 一休禅師 https://amzn.to/2WyJHSk や二宮尊徳 https://amzn.to/3BvFM7h は見つけたので、武者小路が歴史人物伝を書いていたのは確からしいですけどねー)


論から言うと、「343ページ」という、そこそこ分厚いハードカバーですが、二日でサクッと読み終えました。
スラスラ読めて面白い。さすがの手練れ。大衆文学賞の名に冠されるだけのことはあるというか、何でこんな面白いのに読まれてないの(´・ω・`)?と不思議なレベル。
内容的には、そんな皇国史観バリバリということもなく、堂々たる歴史小説。戦後の作家が書いたと言われても、違和感がないくらいで、特に足利尊氏の描写などは、逆賊として貶めるようなものでもなく、ひとかどの人物として評価しようとする筆致でした。
ちなみに直木三十五には本書の姉妹編「足利尊氏」もあり、尾崎秀樹の解説によれば、当時としてはそれこそ新機軸だったようでもあります?
なお「足利尊氏」は、それまでの逆賊尊氏説を改め、歴史のなかの尊氏像を描こうとしたものだ。
P337
それはそれで、公平性・客観性という意味ではいいかもしれませんが、当初の目的(≒”戦前の正成”を読む)的には微妙かしらと思いつつ……しかし、さすがに、戦前に正成を主人公にした本作が、そんなアンチ正成の戦後思想に染まりきるわけもなくw
天皇の直接描写がない点などは即物的な意味で戦前的な配慮を感じさせますし、何より、ラストシーンの鮮烈さは、途中のどんな描写や説明より端的に、腑抜けた戦後とは違う、と、感じさせるものがありました。


タバレになるかもですが、「七生報国」自体は太平記的に常識ですし、80年も前の本に今さらネタバレでもないですかね? 
「七度人間に生まれて逆賊を滅せん、か、よいの、はははは、七度人間に生まれて、逆賊を滅ぼさん」
 兵が、声を合わせて
「七度人間に生まれて逆賊を滅ぼさん」
 疲れきっていた兵は、出ぬ声を張り上げて
「七度人間に生まれて、逆賊を滅ぼさん」
 正成も正季も微笑しながら、兵と共によろめきつつ寺の方へ草むらの中を引揚げて行った。
P317
印象的だったのはこのニュアンス。
自決を前に、みんなで笑いながら、「逆賊を滅ぼさん」という……伝わりますかねぇ。
敵と戦って、敵を滅ぼす、ということが、決して否定的には描かれていないわけです。
アタリマエ……でしょうか?
しかし、実際のところ、よりにもよって(命をかけて「戦った」人たちが祀られている)靖国神社で、「不戦」を誓いましたと平気な顔で言ってのける似非保守政治屋が後を絶たない、その卑しさに気づきもしない腐った精神がゴロゴロしているというのが、まさに「戦後」の風景そのものではなかったでしょうか。
とすれば……戦前に描かれたこのラストシーンの戦闘的な意志のサワヤカサは、まさに好対照。戦後的ラブ&ピースの偽善性をあざやかに照射してくれるもののように思えたのです。(読解力のない当方の勝手な誤読かもしれませんが)


書巻末には、先述の尾崎の解説のほか、直木の甥にあたるというテレビ局社長の小文、そして著者自身による小論「楠氏について」が収録されています。
その小論にいわく、
正成を、偶像破壊的思想から見て彼の行動を、純一無雑の、尽忠的精神からのみではない、と解釈することは、その解釈者の浅薄さ、または、人格の下劣さを示すより外の、何ものでもないようである。
P325
その「浅薄さ」「下劣さ」があまりにも見慣れた光景になりおおせて違和感を覚えることもできないほどに堕落し果てた「今」という時代を、強烈に「異化」してくれる何かが、”戦前の正成”(のなかの最良の部分)には、やはり、あるのかもしれません?
正成の実像が云々という物識り自慢とは別に、日本人が大切にしてきたイメージとしての正成、そこに託されてきた精神性を、思い出してみてもよいのでは?と、しみじみ感じる一冊ではありました。
それでなくても「直木賞」のルーツ。名前だけ商用利用しまくって、作品自体はそっちのけというのもシツレイな話でしょう。せっかくならこの機会にどうぞというか。再刊の見込みはかなーり低そうですし、入手できるうちに入手するのが、吉というところではないでしょうか。

個人的にオススメします。


品詳細はこちら→楠木正成 (歴史ノベルズ) 単行本 – 1990/12/1
楽天で探すならこちら?→
楠木正成 (歴史ノベルズ) [ 直木三十五 ]
「楠木正成 直木三十五」の検索結果:楽天


 

posted by 蘇芳 at 02:07| 南北朝・室町時代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする