2021年06月30日

【読書】竹田出雲「義経千本桜」(岩波文庫 黄 241-3)

日本のこころ~とか言ってみても、それが作られたのはいつごろやらん。
縄文弥生の昔からずっと変わらず一貫してという面もあるにはあるでしょうが。
ずいぶん変わったものもまたあるわけで。
平安時代の古典など読んでいると、違和感・不快感も多々あったり。
ルーツをたどれば貴族文化の影響も無視できないには違いないにしても、一方では、現代にまで続いている日本文化、特に大衆文化については、やはり、江戸の太平の時代に形成された影響がわりと多かったりしないかなー、と。
たぶん、並行して読んでる「源氏物語」の玉鬘十帖の不快指数があまりに高すぎたせいかと思いますが、思わず衝動買いして一気読み。良い息抜きになったというか、ほとんど読んだことがなかった江戸文芸、ちょっと興味が湧いてきたというかハマりそうな今日この頃という一冊があったので……
以下姉妹ブログからコピペ。
(しかし、歴史上の人物(男性)が実はオンナノコだったとか、ラノベ・ソシャゲみたいなネタは昔っから有ルトリアなのですねぇ)



女 体 化 か よ っ !
是といふも父清盛。外戚の望有によつて。姫宮を御男宮といひふらし。権威をもつて御位につけ。天道をあざむき。天照大神に偽り申せし其悪逆。つもりつもりて一門我子の身にむくうたか。(P52)
リボンの騎士かベルばらか、はたまたラノベ・ソシャゲの類かと、思へばいにし八百八町、そのかみお江戸の昔より、日本のヲタクのやることは、今も昔も変わらずと~~とかナントカ、読んでるコッチも思わず五七調になりそうな、名調子のエンタメでございました。


義経千本桜 (岩波文庫 黄 241-3) 文庫 – 1939/7/22

出版社 ‏ : ‎ 岩波書店 (1939/7/22)
発売日 ‏ : ‎ 1939/7/22
言語 ‏ : ‎ 日本語
文庫 ‏ : ‎ 106ページ
ISBN-10 ‏ : ‎ 4003024133
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4003024133


売ページには商品説明など何もありませんが、まあ、有名な浄瑠璃(&歌舞伎)の演目なので、調べればいろいろ予備知識は出てくるでしょう。
Wikipedia:義経千本桜
ネタバレ的にいろいろ書かれていますが。まあ、いろいろ史実離れの超展開。壇ノ浦でタヒんだはずだよ平家の公達という感じで3人ほど出てきますが。これも素直に出てくるわけでなく、あるいは船宿の主に、あるいは鮨屋の娘の許嫁に、あるいは禅坊主にと、身をやつして登場。最初は読者にも正体が伏せられているので、あるとき突然、早変わり。〇〇と思えば実は××、的などんでん返しが何度もくりかえされて、通読するとくどいくらいですが。歌舞伎の演目というのは必ずしも全編通しで上演されるわけでもなく、「ナントカの段」だけが上演されたりすることもあるようなので、これはこれで良いのかというか。単に人物の正体だけでなく、その意図するところもいろいろ偽り、それが突然、豹変して本音をあらわしたり、など、なかなか目まぐるしい展開。ブンガク的な深みはさておき、エンタメ性は高いというか、さすが大衆芸能。庶民の娯楽として、ちゃんと楽しい内容になっているようです。
(※冒頭で触れた、安徳天皇が実は姫宮、というのも、意外性のひとつですが、では天皇が女児でなければならない、女児であればもっと面白くなる、劇的に盛り上がる、というような深い理由や意味や必然性があるのかと言えば、特にどうということもなく……せいぜい、清盛のその妄念が因果となって一門に報い~という冒頭引用の取って付けた理屈づけになるくらい。それでもやっぱり、当時の観客的には、単なる幼帝よりは、”男装の麗人”のほうが、萌えるというか、興奮したのでしょうね。そういう欲望に忠実なところがいかにも大衆演劇。もっというなら、人形浄瑠璃はさておき、歌舞伎の場合、演者はすべて男性ですから、「男装のオンナノコ」を本物の「オトコ」の子役が演じる、という……なかなかちょっと世紀末デカダン伝説的な光景がくりひろげられていたのかもしれません?)
古典と云うと何かお高尚な堅苦しいイメージを持ってしまいがちかもしれませんが……そういう先入観を良い意味で吹き飛ばしてくれる一冊かも?


瑠璃の台本なので、書式がかなり変わっていて……この岩波文庫の場合、改行はほぼ皆無にひとしいですし(「道行」のところに一回だけ)、句読点は「。」だけでそれも意味より音の区切りか息継ぎのポイントか?と思える部分に打ってありますし。送り仮名はルビと一緒に行間に打ってありますし。担当パートとか発声とかの指示らしきものも入ってますし、ちょっと慣れるまで読みづらい面もありますが。
文章自体は、当時の一般庶民が耳で聴いて理解できるレベルですから、決して難しいわけでもなく、わりとスラスラわかりやすいです。まあ、それも人それぞれレベル次第ですが……平安時代の古典に比べりゃ天地の差ですというところ。


お、これ、Amazonだと、Kindle版があるような表示になっていますが、リンクをたどってみると、そちらは岩波文庫とはまったく違うエディションのようで。
義経千本桜 浄瑠璃傑作集 (温古堂文庫) Kindle版
もちろん、内容自体は同じでしょうが、
漢字表記を旧字体から新字体に改め、適宜ルビを振り、台詞を鍵括弧でくくり出しています。
とか書いてありますから、岩波文庫版より、たぶん、はるかに読みやすそうです? それはそれで、Kindle版には操作性など課題もあるかもしれませんが……
電子書籍に抵抗のない方は、そちらで読むのが、あるいは、もしや、楽だったりするかもしれません?


かし、レビューはどちらも共通で……
Amazonではよくある話ですが、エディションの違う出版物がごちゃ混ぜになりかねないので、重々、注意が必要そうです?
カスタマーレビュー(岩波文庫)
カスタマーレビュー(温故堂文庫Kindle版)
5つ星のうち4.6
3 件のグローバル評価
星5つ…63%
星4つ…37%
それ以下は0%
件数少ないですねぇ。
浄瑠璃・歌舞伎・義太夫狂言の名作と言いつつ、文学全集の類のほかは、意外と、手軽に読める本は少ないみたいですし、本書も新刊品切れで、何かいろいろ心もとないかぎり。もう少し親しまれてもよさそうなものではあります。(まあ、舞台で見るのが本道と、言えば言えるのかもしれませんが)


はともあれ、少ないながらも、今のところ、高評価のみではあるようで。
「現代日本小説では味わえない文章のリズムとものがたりの昂揚を存分に堪能できました。」とのレビュー:Amazon
「観劇を楽しみにしており、その予備知識に原作を読んでおこうと思い購入しました」とのレビュー:Amazon
など、大好評。
いずれも物語についての感想というレベルではないですが……
かなりマニアックな人たちではあるようで、それだけ、魅力ある演目には違いないでしょう。
当方、「旧仮名遣い及び旧字体の良さ」までは、ちょっと正直わかりませんが、記事冒頭で「思わず五七調」などと書いてみたように、「文章のリズムとものがたりの昂揚」は確かに存分に味わえたというか、ちょっとクセになりそうな作品ではありました。
史実離れのファンタジーだけに、一応、義経的にはハッピーエンドでもありますしw
せっかく日本人に生まれたなら、一度は読んで、味わって、楽しめるくらいの読解力は身につけておきたい気はしないでもない一冊でした。
とりあえず勢いで同じく竹田出雲の「菅原伝授手習鑑 https://amzn.to/2UR8wHR 」もサクッと衝動買いしたのはナイショです(古本なのであまり古いエディションとかでないことを祈りつつ、到着待ち)


刊品切れで中古を探すか、箱入ハードカバーの文学全集とか、電子版で読むとかするしかないかもしれませんが、そのへん含めて、
「義経千本桜」の検索結果:Amazon
「義経千本桜」の検索結果:楽天

などなどなど……
本文以外の周辺書や、何でしたら歌舞伎・浄瑠璃のDVDなども含めて、チェックしてみていただければ、というところですね。

じっくりゆっくり……
健闘を祈ります。


品詳細はこちら→義経千本桜 (岩波文庫 黄 241-3) 文庫 – 1939/7/22
Kindle版?→義経千本桜 浄瑠璃傑作集 (温古堂文庫) Kindle版
こちらもどうぞ?→「義経千本桜」の検索結果:Amazon
楽天で探すならこちら?→
義経千本桜 (岩波文庫) [ 竹田出雲(2代目) ]
「義経千本桜」の検索結果:楽天


  

posted by 蘇芳 at 14:15| 江戸時代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする