2020年01月07日

【動画】日本に二大政党はこうしてできた 歴史人物伝「星亨」 椿 倉山満


チャンネルくらら から。


動画概要:
2019/07/14 に公開
7月18日新発売!『世界一わかりやすい日本憲政史 明治自由民権激闘編』 倉山満 https://amzn.to/2ZScJcw

別のシリーズなのですが、時代も内容も近い(?)ので、こちらからの流れで視聴しておきます。

自由党=火付け盗賊というのは、敵勢力(?)のレッテル貼りなので、それを以てして民権派を山本太郎と同列に扱うのは不当と思いますが。
Wikipedia:三島通庸
まあ、ネタにマジレスしてもしようがない類でしょうか。

民権運動をこちらこちらで書いたような文脈でとらえるなら、自ずと、見解は違ってきてもよいように思います。

政治とカネの話にしても、星亨が、当初は、英国式の寄付金による政党運営を試みたという話も押さえておかないと、やはり、不当であるようにも思います。
入党後、星が、真先に解決しなければならなかったことは、自由党の財政だった。しかし、党を運営するとなれば個人の金などはたかが知れている。
 政党は、「政商」というスポンサーを持つか、一般の寄付による以外に資金源はない。ところが、一般の政党に対する寄付くらい当てにならないものはないのである。自由党の中を見ても、大言壮語していざと言えば愛刀を引っ提げて事に及ぼうとする者はいるが、カネの心配などする者はいない。そこで星は、まず英国式に正攻法で始めることにした。
金子仁洋「政官攻防史」https://amzn.to/36vtYD3
星は、党員はもとより、自由党の主義主張に賛同する人びとからも広く寄付金を募ろうとした。自分は率先して千円を寄付した。千円というのは、巡査の初任給の十年敎分に当る大金である。板垣と後藤は別として星のこの拠出は、党員としては最高であった。しかし、はかばかしくはいかなかった。星は、この翌年の党大会では、さらに寄付金募集のことを痛言しなければならなかった。
(同上)
 ところが、結果はみじめなものに終った。集まったのはわずか一万円ほどにすぎなかった。英国帰りのきれい事では日本の現実は動かないことがだんだんと身に沁みてきたのである。機関紙「自由新聞」の赤字がもう目の前の緊急処理事項になってきている。星の資産はみるみる減っていった。
(同上)
星の負債はみるみる六、七千円にふくれ上った。寄付金に頼る政党活動が日本では困難であることに気付くまで、さして時間はかからなかった。要するに、星はここで行き詰まったのである。
(同上)
現代でも日本には欧米のような政党・政治家への小口献金の窓口や文化というのは根付いていないように思いますが。ましてネットもクラウドファンディングもなかった明治時代。星の苦労も挫折も無視しておもしろおかしく金権腐敗の額を云々するのは公平な態度と言えるでしょうか。
まあ、クラヤマ氏はそんなことは百も承知で売れるために奇を衒っているのかもしれませんが。。

引用した金子仁洋の著書は、出版社の惹句によれば、
明治以来の日本の統治は、「政」と「官」の攻防の歴史である。「藩閥官僚」に始まる「官」のエトスは、今に到るも明治以来の超然主義、「政」不信である。これに対して「政」は絶えず挑戦し、絶えず敗れて来た。そして軍・検察官僚がついにこの国を征圧した後、「官」は自家中毒を起こし、敗戦を迎える。そして戦後、五五年体制によって「政」を征圧した「官」は、再び静かな崩壊、自家中毒を起しはじめた。
という観点で明治以来の内政史を書いたもの。
官僚主導の「五五年体制」を批判している(らしい)くららが、ここで言う「政」の側に当たる民権運動をここまであしざまに罵り嘲弄しなければならない理由が、今ひとつよくわかりません。
むしろ、正攻法の寄付金運営に挫折したことから「リアリスト」に脱皮した星が、三島通庸の自由党潰しの戦略に注目し、それを逆手に取って、政官癒着による資金調達構想を持つようになった、という金子氏の主張に注目した方が、歴史の見通しがよくなるような気がします。
三島は、後に内務省土木局長になってから、開発による利益分配、同時に自由党潰しという方法を、全国に拡めたのである。自由民権、民力休養、地租増徴反対などを叫んで反政府運動に走るより、政府と組んで地域を開発し、その利益を分かち合う方がお互いのためになるではないか、と三島は地方郷紳層を説いた。歯向かえば叩くが、手を組めば開発利益を与える。過激を嫌う地方豪農層はそれに乗った。以後、この土木による開発利益、地方懐柔という手法は、今にいたるも政権の骨法となるが、これにより自由党の支持基盤は、腹背に敵を持つ形になったのである。
 そこで星は考えた。開発利益は、元はといえば民のものである。しかるに今は「官」に独占されている。それを「政」と「官」が分け合ってどこが悪いのか。
(同上)
もちろん、金子氏の主張がどのくらい正しいのか、間違っているのか、私ごときにはにわかに判定もできませんが。。
上の動画のおもしろおかしい漫談より、むしろ、金子氏の説明のほうが、日頃、くららが唾棄してやまない自民党政治のルーツにつながっていきそうな気がして、説得力を感じないでもないのです。。

にもかかわらず、当のくららが、県令時代の三島の「自由党=火付け盗賊」の図式に乗っかって、星をコケにするだけに終始するのは……んー。何なのでしょうね。頭のおよろしいセンセイ様の深いお考えは当方ごときおバカにはよくわかりませんね。。


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posted by 蘇芳 at 01:48| 明治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする