2019年08月19日

【動画】天皇が二人いたってホント!?不思議な50年【CGS 斎藤武夫 歴史の授業 第29回】


ChGrandStrategy から。


動画概要:
2019/08/16 に公開
今回から時代は室町時代へと入ります。
この時代に入ると、日本は不思議に巻き込まれてしまったように、驚くべき
時代へと突入します。
武士の時代だった鎌倉時代、その時代を憂いている人物がいました。彼こそが「後醍醐天皇」だったのです。
後醍醐天皇が新しく築こうとした日本はどんなものだったでしょうか?

そして鎌倉幕府滅ぼすための戦いでは知っている人も多いあの三人が登場します!

動画の冒頭で神谷氏が明治維新の時に云々と発言していますが、さらにもう少し俯瞰すると、江戸幕府と鎌倉幕府は、(家康が頼朝を範と仰いだとも言いますから当然ですが)、その崩壊だけでなく、成立の時点でもかなり似通った性格を持っていて……つまるところ、(結果論かもしれませんが)、幕府権力の生成と発展と衰退と崩壊は、総体として同型の「パターン」をなぞっているようにも見えなくはありません。

こちらこちら、あるいはこちらなどなどでも書いた通り、「親政」vs「不親政」の思想的対立は、皇国日本の歴史の底に通底する重大テーマのように思えます。

鎌倉幕府にせよ江戸幕府にせよ、天皇の「臣下」たる征夷大将軍が政治の実務を「代行」する幕府というシステムは、君臣の融和的秩序の存在≒朝幕の協調を前提にしていますし、その協調は、開府当初には、相当程度、実現されていたように思います。
鎌倉幕府については、承久の乱以前の朝幕関係に大きな問題があったとも見えませんし、江戸幕府にしても、徳川義直、徳川光圀、保科正之など徳川の名流がことごとく尊皇家でもあり、尊皇思想家を保護・育成さえしていました。幕末に討幕のイデオロギーに転化するはるか以前のこのころには、尊皇思想と幕府の存在は矛盾するものではなく、むしろ尊皇思想こそ幕府存立の根拠でさえあったのではなかったでしょうか。
しかし、現実政治の都合、なかんずく元寇や黒船といった外患への対処をめぐって、国内にも風波が起こりはじめ、恩賞問題や安政の大獄といった形でその風波への対処を誤ったがため、両幕府とも、内憂を悪化させることになり……
それがついに武力闘争へと発展していくとき、幕府による天皇統治の「代行」というシステムに対抗するためのイデオロギーとして、天皇ご自身による直接統治すなわち「親政」の観念が脚光を浴びることになりました。
しかもその後、「親政」のイデオロギーはイデオロギーに終始し、現実政治の採用するところとはならなかったことも共通しています。建武政権はそれでも実際に「親政」を試みましたが、明治政府はその教訓に学んだか最初から試みさえしなかったのではないでしょうか。早くも孝明天皇の御代に「非義勅命は勅命に非ず」とまで言い切ったのは大久保利通ですが、山内容堂の「幼沖の天子」発言ははからずも「志士」の本質を喝破していたように思います。そして維新後には、記紀万葉はじめ古典を読みあさって理論武装した井上毅が「シラス」統治論を構築し、在野の福沢諭吉なども有名な帝室論を著して不親政の論陣を張り、明治政府は不親政の立憲君主制へとかじを切っていきます。
しかしながら、そうした現実的政治的要請にもとづく「不親政」という現実路線は、かつて天皇「親政」の錦の御旗の下にはせ参じたある種の理想家たちから見れば、手ひどい裏切りとも見えるでしょう。せっかく幕府を倒して、天皇御親らによる神代さながらの神聖な統治がはじまるかと思えば、所詮、口先だけのきれいごと。権力の座についた亡者どもが、あっというまに新たな幕府(足利幕府、「薩長幕府」)をデッチアゲた。これでは元の木阿弥ではないか、と……
そうして新政府に対する様々な意義申し立てが、その後、長く続くことになるところまで、「パターン」はくりかえしているように見えなくはありません。

もちろん、現実の過去をそうした「型」にはめてみようとすることに対する批判はありうるでしょうが……
それをいうなら、そもそも、動画でも軽く触れられている南朝正統論なども、かなり型にはまった杓子定規な特殊なイデオロギーであるともいえるわけで。いわゆる薩長史観の「型」にはまっているのはどちらだと、問いかけることも許されるのではないでしょうか。

腐った戦後の左翼反日自虐史観を払拭せよとの声が高まるのはまことに結構なことですが、それが単純な回帰・揺り戻しに終始して、左の思考停止が右の思考停止に取って変わるだけなら、それはそれでまた不毛な気がしないこともなく……
幕末の国学にとっての「古事記」に対する、江戸時代初期尊皇思想にとっての「日本書紀」(とりわけ最新エディションとしての慶長勅版)の重要性や、江戸時代の思想家たちに相当程度共通する仏教排斥の傾向など、自称愛国者が見てみぬふりをしがちなトピックにも目を向けつつ、そこに見る親政・不親政の思想的振幅は、実に、昭和の赤化へとさえつながっていったのではないかと……大それたことを考えたりもする今日この頃です。

毎度のことですが、全速力で動画感想から遠ざかっていくブログですな。。

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posted by 蘇芳 at 01:05|  L 「CGS 斎藤武夫 歴史の授業」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする