2019年02月28日

【動画】伝教大師最澄と根本中堂


Sakamoto Hieizan から。


動画概要:
2016/12/06 に公開

空海と最澄、と、並び称される双璧ですが。
空海のほうが通俗的な人気が高いのに対して、最澄のほうは今ひとつ地味なイメージのような気もしないこともありません。
(空海が妖怪退治をするマンガくらいはあってもおかしくなさそうですが、最澄だと今ひとつピンとこないような……w)

しかし、こちらで考察したように、平安遷都が、堕落した奈良仏教との決別を目指し、いわゆる「日本仏教」の確立へと向かう決定的な転機であったとすれば、他でもないその平安京の鬼門を守る霊山と、その開祖が重要でないはずもないでしょう。
平野邦雄「和気清麻呂 (人物叢書)https://amzn.to/2NwKtWH」によれば、最初に最澄をひきたて、桓武天皇に推薦したのは、他でもない和気清麻呂その人だったと言いますし、唐への留学や、比叡山に大乗戒壇を設けるにあたっては、清麻呂の息子・広世の斡旋があったとか。

空海に比べて、最澄は留学期間の都合上、密教の修得が不十分だったと悪く言われたりもしますが……
裏を返せば、その分、社会復帰は早かったというか。新仏教の確立に関しては、平安京の草創期から奔走したわけで。国家的な寄与に関しては、空海よりもむしろ年長の最澄のほうが、先行者的な貢献が大きかったとも言えないことはないのかもしれません。

最澄には密教修行の不足を素直に認め、自ら空海に教えを乞う謙虚さもありましたが、それをいいことにここぞとばかりにマウントを取り、真言宗の優越を認めさせようとした空海のさもしさやいかに、という気もしなくもありませんし……
それはさておくとしても、自宗のみが他宗に優越するとの空海の傲慢は、必然的に「純化」や「孤立化」の方向を目指しやすく、宗教的には立派かもしれませんが、世俗の歴史への影響という点からは、両宗の両立を説いた最澄の現実的とも微温的ともいえる態度に対して、一歩を譲る結果になりやすいもののような気もします。
(その後、盛大に堕落した天台宗・比叡山にこそ、僧兵の跋扈なり鎌倉新仏教の母胎なり、戦国武将との抗争なりといった、日本の「歴史」の上からは、良くも悪くも無視できないトピックが多いのは、偶然ではない……??)

そもそも、真言宗に比べて天台宗の密教化が遅れた(伝教大師最澄のあと、慈覚大師円仁・智証大師円珍の入唐を待つ必要があった)ということは、天台宗には顕教的要素も根強くあるということで……
その根本経典が「法華経」でもあるでしょうか。
(真言密教の根本経典は「大日経」や「金剛頂経」?)
それを思えば、天台の教学は最澄入滅後の密教化を経てようやく「完成」したと見ることももちろんできるのでしょうが、逆に、天台の本質はあくまで最澄の思想にあるという原理主義的な発想もありえなくはないかもしれませんし、その立場からすれば過度の密教化はむしろ「堕落」でさえありうるかもしれません。

実際、法華行者としてある意味で最澄よりも有名な、鎌倉時代の日蓮も、ご多聞に漏れずというべきか、元は比叡山に学んでおり、彼が法華経を「発見」したのも、今は堕落してしまった天台宗の本来あるべき姿を示す根本経典としてだったかもしれません。
つまるところ、日蓮宗とは、「最澄へ帰れ」「法華経へ帰れ」と叫ぶ原理主義・復古主義として、天台宗から派生した宗派なのでしょうか。(だとすれば、それが、同じく天台宗から派生した念仏宗(法然も出発点は比叡山)と、激しく憎み合うというのは、ある意味、いかにもわかりやすい派閥抗争ではあるかもしれません)
まあ、日蓮なる人物にはいろいろと問題が多すぎますが……
その日蓮のルーツさえも天台宗であり、その天台宗の本来の根本経典が法華経であるということは、教養として押さえておいてもよいような気はします。

「法華経」は日本では特に人気の高い経典ですが……
聖徳太子の「法華義疏」に始まって、(道鏡事件の国家的危機~平安遷都を経て)、最澄の天台宗に結実する。
その歴史的意義には、私たち俗物としても、無視できないものがあるのかもしれません。

上の動画でも「法華一乗」の説明にそれっぽいことが語られていますが……こちらで言及した「自性清浄」の教理を以て法相宗の護命や徳一と対決したのも、そういえば空海ではなくむしろ最澄でした。
Wikipedia:三一権実諍論
密教的な現世利益の加持祈祷が現代人の目にばかばかしいオカルトに見えるとしても、その一方、この「自性清浄」「法華一乗」の平等観は現代人の目から見てこそ違和感なく肯定しやすいもののようにも思えます。

平安遷都に伴う、いわゆる「日本仏教」「仏教の日本化」にあたっては、密教よりもむしろ顕教としての天台宗、その根本経典としての法華経。つまるところ最澄の足跡こそが決定的に重要だったのかも……しれません?

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伝教大師の生涯と教え (大正大学まんだらライブラリー)
日本人のこころの言葉 最澄
伝教大師最澄の寺を歩く―比叡山延暦寺を中心に、最澄ゆかりの地へ
全品現代語訳 法華経 (角川ソフィア文庫)
ラベル:平安時代 仏教
posted by 蘇芳 at 15:19| 仏教 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする