2019年01月12日

【動画】天子?皇帝?天皇?日本の独立を決めた一言とは?【CGS 斎藤武夫 歴史の授業 第14回】


ChGrandStrategy から。


動画概要:
2018/12/31 に公開
今回は、遣隋使についてお話していただきました。

聖徳太子の時代に、中国は隋として統一がなされました。
周辺国が次々と隋の皇帝に属国としての姿勢を見せる中、聖徳太子は驚きの手紙を出します。

その手紙とはどの様な内容でしょうか?


授業づくりJAPANの日本が好きになる!歴史全授業
お求めいただける方は、斎藤武夫(授業づくりJAPANさいたま代表)までご連絡ください。
(1)お名前(2)郵便番号(3)住所(4)電話番号(5)職業
を明記の上、saitotakeo@jcom.home.ne.jpまでお願いします

こちらなどでチラッと書きましたが、近代以前の日本の戦争というのは一部を除いてそのほとんどが内戦・内乱の類なので……勝ち組も負け組も両方日本人なのですよね。
したがって、どちらか一方の肩を持つと、必ず、反対者が日本国内から現れて、あっというまに内ゲバに陥りやすい。という気もします。

聖徳太子に関しても、蘇我氏とともに物部氏を亡ぼした「内戦」の当事者でもあり、仏教の導入者として、潜在的には物部以外の廃仏派とも微妙な関係だったかもしれません。
動画の神谷さんのように、明治維新も聖徳太子外交と似ている、と、言ってみても、間違いではないでしょうが、その維新の精神的支柱になった思想家たちに、仏教嫌いが多かったことも事実。聖徳太子を諸悪の根源呼ばわりする頼山陽の文章は、当ブログで何度も引用しているおなじみです。
我が邦は君臣の義、万国に度越す。而るに西竺の説、これを壊り、これを土灰沙塵に帰して止む。而してその端を開く者は、厩戸・馬子なり。http://amzn.to/2DyWc1r
聖徳太子に似ているなどと言われれば、志士のほうこそ怒りださないともかぎりません?

もちろん、だから神谷さんの見方が間違っているとか、志士の仏教嫌いが全面的に正しいとか、聖徳太子は国賊であるとか言うことではなく……
国内だけに閉じこもった内ゲバの論理によって、見えるものもあれば、当然、見えないものもある、ということでしょう。
そして、国内だけに注目していては、しばしば見えなくなりがちなものこそ、今回の動画の主題でもある「外交」というものではないでしょうか。

たとえば、こちらで少し触れたように、平氏を裏切り、幕府を乗っ取り、上皇に弓を引き、悪政を敷い(たとされ)て、ついには後醍醐天皇に滅ぼされた北条氏は、あるいは悪役のイメージが強いかもしれませんが。近代以前の日本史上最大の祖国防衛戦争を戦い、勝利したのは、実に、その北条執権の時代でした。
「太平記」時代の内戦の論理で朝敵呼ばわりしていては、この対外戦争≒外交的事実の説明が難しくなるかもしれません。

また、維新の志士はテロリスト、的な悪口を弄する史観も時々突発的に流行して、それは一面において(あるいは大部分)真実かもしれませんが、それでもなお、官軍・賊軍の内向きの罵り合いに終始していては、当時日本がさらされていた危機的な国際情勢が見えなくなりがちではないでしょうか。安全保障環境から目を背けて、国内の派閥抗争に終始していては、それこそ、日本が滅びていたかもしれません。さりとて、お上品なお話合いで、派閥抗争が終息するというほど甘いものでもないでしょう。
ここでもまた、「敗者の日本史」的な内向きの論理では、植民地主義西洋列強の侵略から日本の独立を守り抜いた「テロリスト」たちの外交的功績を説明することが、難しくなるように思います。

他にも例を挙げればいくらもあるかもしれませんが……

聖徳太子もまた、仏教の問題、儒教の扱い、物部の滅亡、馬子による崇峻天皇の弑逆など、「内政」だけを見るならば、引っかかる点も多いですし、頼山陽のような見方もあながちに否定しえるものではないように思えますが……
一転して「外交」に目を注いだとき、例の国書に象徴される太子の功績は、日本人であれば、何人も否定のしようもないのではないでしょうか。

つまるところ、人間的には問題だらけの維新の志士が祖国の独立を護り抜いたという一点において偉大であるのと同様に、聖徳太子の偉大さもまた、日本の独立を貫いたという外交的実績にこそあるのであって、仏教説話の説くごとき聖人君子であったことにあるわけではない。もっというなら、仏教説話の説くごとき聖人君子などでは決してなかった。というべきなのかもしれません。
贔屓の引き倒しをしたがるのは、人間のさがかもしれませんが、しかしそもそも、「聖人」と「英雄」は何もイコールである必要はないでしょう。目的のためなら手段を選ばない苛烈な英雄だっているはずです。物部を滅ぼし、崇峻天皇弑逆さえも黙認し、それでもなお、という……あまり小説的な妄想を膨らますのもホドホドにするべきですが、聖徳太子もまたそういう意味での「英雄」だったのでしょうか?

動画で言われているように、この挿話が、他の時代のアレコレと似ているというのなら、歴史上の人物に対する、そうした評価の複雑さも含めて考えるべきかもしれませんね。。

Amazon:
上宮聖徳法王帝説 (岩波文庫)
どうする東アジア 聖徳太子に学ぶ外交 (祥伝社新書)
なぜ日本だけが中国の呪縛から逃れられたのか 「脱中華」の日本思想史 (PHP新書)
聖徳太子 本当は何がすごいのか
「日出づる処の天子」は謀略か ―東アジアと聖徳太子 (集英社新書)
日出処の天子 完全版 1 (MFコミックス ダ・ヴィンチシリーズ)
posted by 蘇芳 at 20:17|  L 「CGS 斎藤武夫 歴史の授業」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする