明和町公式動画 から。
動画概要:
2016/07/28 に公開
古代から中世にかけて、天皇に代わり伊勢神宮の天照大神につかえた斎王の宮殿があった明和町 斎宮。その斎宮の発掘調査に基づき忠実に復元した建物が平成27年秋に完成。番組では建物内部や特徴をご紹介。
日本遺産ポータルサイト:祈る皇女斎王のみやこ 斎宮
明和町ホームページ:斎宮 > 斎宮跡
産経ニュース:国史跡・斎宮跡復元の「斎宮寮庁」完成 11月8日まで記念特別展 三重
観光三重:さいくう平安の杜の観光スポット情報
こちらに登場していた建物群。今一つ場所がハッキリしませんでしたが、上の動画によれば、やはり「さいくう平安の杜」でよさそうでしょうか?
「初代」の斎王は誰だったかというと、考え方によって意見の分かれるところで。
伝説的・象徴的には豊鍬入姫命や倭姫命とも言えなくはありませんが、豊鍬入姫命は伊勢には足を踏み入れてもいらっしゃいませんし、倭姫命は倭姫命で、あくまで神鏡の鎮座地≒伊勢神宮内宮の創始者であって、斎宮の所在地であった明和町については実に「素通り」されているとも言えるわけです。そういう意味では、倭姫命は伊勢神宮神職の初代ではあっても、それが初代斎宮とイコールかというと……???
神宮の経営主体がいつごろどういう経緯で荒木田氏を中心とした「プロ」の男性神職集団にシフトしていくのか、そういえば、あまり聞いたこともないような気はしますが……
いずれにせよ、斎王・斎宮が「制度」として確立されるのは天武天皇の御代。制度上の正式な初代斎王は大来皇女ということにもなるのでしょう。
Wikipedia:大来皇女天武天皇の御代といえば、こちらなどでくりかえし触れてきたように、国民国家ニッポンの再整備が行われた時代。祭政一致の国柄ですから、政治制度の整備は、必然的に国家祭祀の整備を伴うわけで。こちらで書いたようにいわゆる天武・持統朝は、正史に神道祭祀の記述が大幅に増える時期でもありますし、その律令にも日本独自の「神祇令」が存在したりもしているわけで。。
以後、斎宮の制度面はもちろん、設備面でも、順次、充実が図られていくことになるのでしょう。
特に飛躍的な拡充が図られたのが、聖武天皇の御代だそうで。(斎王は井上内親王。こちらでふれた悲劇の皇后でもあります)
神亀四年(皇紀1387/西暦727)、斎宮寮の官人が一時に121人も任命され、翌年には斎宮寮管轄の十三司も定められて、斎宮の組織固めが行われたとのこと。寮の財源も伊勢神宮の私財ではなく、国家予算が充当されるようになり、斎宮はいよいよ国家機関としての性格を明確にしていくのだとか。
「伊勢神宮に仕える皇女・斎宮跡 (シリーズ「遺跡を学ぶ」) 」の記述によると、拡充された斎宮では、寮の官人のほか、斎王に使える女官や、警備の武官、雑役人等を含めると、多い時には520人にも上る人々が暮らしていたとのこと。
発掘調査で発見された方格地割を持つ広大な官衙街が形成されるようになったのも、そのころからなのかもしれません?
聖武天皇といえば、仏教政策を推し進められたばかりか、自ら出家までされた天皇として有名。「続日本紀」を一読すれば、その弊害の大きさも目につきますが……
その一方で、斎宮の整備という神祇政策にも熱心でいらっしゃったというのは、あまり聞かない話でもあり、意外でもあります。その真意のほどが気にかかるところですが……
聖武天皇の仏教「政策」というだけあって、国分寺・国分尼寺・廬舎那仏など、その内実は(そのままに成功したかどうかはさておき)すべからく仏教を国家統治の手段とするものではあったかもしれません。
その同じ聖武天皇の元で、斎宮の国家機関化が強力に推し進められたというのが本当だとしたら……
仏にせよ神にせよ、あくまでも、国のため民のため、統治のための手段として活用せられたのが聖武天皇。単なる「仏教」や「神道」ではなく、あくまで「国家仏教」「国家神道」とでもいうべきものの推進者であって……つまるところ、単なる宗教者ではなく、どこまでいっても、やはり「天皇」であらせられた、とは、申し上げてもよいのでしょうか?
斎宮内の建築物については、時代による変遷もあり、まだすべてが完全に解明されたわけではないかもしれませんが……
奈良時代に拡充され、鎌倉時代に衰退した斎宮。つまるところその制度が安定的に運営されたのは、やはり平安時代ということになるでしょうか。
神祇令。斎宮式。要は律令格式に規定され、律令国家とともに盛衰したのが、制度としての斎宮。であるとすれば……
文字通り「平安」の杜と名付けられた一画に再現されたのが、(斎王自身の生活や祭祀の場ではなく)、官衙の建物だというのも、それなりに相応しいことではある。のかもしれません。
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伊勢斎宮跡―今に蘇る斎王の宮殿 (日本の遺跡)
伊勢斎宮の歴史と文化
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