2018年06月28日

【動画】日本遺産~祈る皇女斎王のみやこ 斎宮~6業平松


明和町公式動画 から。


動画概要:
2017/05/08 に公開
平成27年4月 文化庁が新たに創設した制度「日本遺産」に明和町が申請した「祈る皇女斎王のみやこ 斎宮」が認定されました。この番組では「祈る皇女斎王のみやこ 斎宮」を語る上で不可欠な文化財群をご紹介します。第6回目は「業平松」です。
観光三重:業平松の観光スポット情報
ゲンキ3ネット:王朝文学と斎宮の歴史を辿る「業平松」 多気郡明和町大淀

動画に引用されているやりとりは第六十九段のものですが……
実を言うと、当方の手元の「伊勢物語」第六十九段にはどこにも「松」など登場しないのですよね。
夜やうやう明けなむとするほどに、女方よりいだす盃の皿に、歌を書きていだしたり。取りて見れば、
  かち人の渡れど濡れぬえにしあれば
と書きて、末はなし。その盃の皿に、続松の炭して、歌の末を書きつく。
  また逢坂の関は越えなむ
とて、明くれば尾張の国へ越えにけり。
登場するとすればせいぜい「続松の炭」ですが。松は松でも松明の類ですから、松違い。いわゆる単なる消し炭ですな。別に松の樹が生えているわけではありません。

いずれ斎宮というのも大淀の海辺に築かれた宮ですから松くらいどこにでも生えてはいたでしょうが、本文がこれでは、無理やりこじつけて名所にするにも無理があるような気がしないこともありません?

まあ、あえてというなら、動画に登場する六十九段ではなく、第七十二段の、
 むかし、男、伊勢の国なりける女、またえあはで、となりの国へ行くとて、いみじう恨みければ、女、
  大淀のはつらくもあらなくに
    うらみてのみもかへる浪かな
にようやく「松」が登場しますから……これが業平松だっ、といえば言えないことはないでしょうか。
それはそれで、あまりに一般名詞すぎるというか、別にその松の生えている場所で実際に~という話でもない気はしますが……

「伊勢物語」は異本も多いですし、後世に注釈本の類も数多書かれてきましたし、業平伝説に尾ひれがつく中で、「松」にかかわるロケーションもあらためて形成・伝承されていった可能性はあるかもしれません?
Amazon:
伊勢物語―付現代語訳
伊勢物語 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス)
伊勢斎宮と斎王―祈りをささげた皇女たち
斎宮の文学史

追記:
ちなみに「松」といえば典型的な「待つ」の掛詞。
こちらで考察した構成上の転回や、こちらの追記で引用したいくつかの歌を見るに、この一連の伊勢の章段(とりもなおさず「伊勢物語」の中核)は、むしろ「待たない」こと、男女の性愛の世界にきっぱりサッパリ別れを告げて「翁」の世界に突入することこそが主眼のような気がしないでもない当方としては、今さら「松」を観光名所にされても今一つノリきれないものも感じなくはないですが……まあ、野暮というものなのでしょうね。。
posted by 蘇芳 at 19:36|  L 斎宮 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする