2018年01月14日

【動画】「陸軍の勝算」秋丸機関の真実③ 林千勝(昭和史研究家)偕行社 平成27年11月29日




山本五十六や真珠湾攻撃等への批判それ自体は首肯できるのですが、その一方で、米国の造船能力が素晴らしく「科学的」であるはずの予想のになっているのは何なんだ、という気はしないでもありません。

秋丸レポートには造船能力以外にも様々な数字が推定され、予想されていたと思いますが、それらすばらしくカガク的で合理的な根拠抜群の数字の数々も、所詮は……となれば、秋丸レポートはその根幹から揺るぎかねないのではないでしょうか。

結局のところ、「経済交戦力」という概念は、そしてその算出方法は、その算出に利用されたデータは、妥当だったのか?

嘘には三つある。嘘と、真っ赤な嘘と、統計である、とは有名なアフォリズムですが。
秋丸機関のそれが、三つ目の嘘でなかったかどうかは、やはり、疑念が残るのではないかと思います。
こちらでも触れた有沢広巳への疑惑は、今回の動画の終盤の情報と合わせて、頭の隅に置いておいてよいのではないでしょうか。

しかし、それでも、なお、合理的予想の「倍」であったのは、あくまでも、米国の潜在能力だったとも言えるでしょう。
米国にどれほどの能力が潜在していたとして、要はそれを発揮させなければよい。参戦の口実を与えさえしなければよい、とも言えるわけですし、それこそ「定石」に類する判断でしょう。
(裏を返せば、だからこそ、ゾルゲも尾崎もホワイトたちも、日本を「米国」との開戦に追いやろうとしつづけたのでしょう)

秋丸機関の「西進」は、少なくとも「北進」ではないわけですし、どちらかといえば「南進」に近くもあったわけですから、はたして、その計画通りにすべてが運んでいたとして、どこかで番狂わせが起こっていなかったかどうか、神ならぬ身には所詮わかるはずもありません。
(尾崎秀実は米国を参戦させるには日本を南進させるだけで十分だと考えていたようでもあります。
尾崎の鋭利な刃物のような予見力は、日本についても、「南方への進撃においては必ず英米の軍事勢力を一応打破しうるでありませうが、その後の持久戦においては日本の本来的な経済の弱さと、支那事変による消耗がやがて致命的なものとなって現はれてくるであらう」と予測している。
(中略)
そればかりか、日本は最終的に英米との戦争で破局的な敗北を回避するために「ソ連と提携し、之が援助を……必要とする」、そのためにも「社会主義国家としての日本を確乎として築きあげる」とまで言いきっている。二年後の一九四四年にはその通りになり、陸軍を中心にこのソ連との同盟(=日本がソ連の属国となること)を模索する終戦工作が開始された。(中川八洋「近衛文麿の戦争責任」)
それはつまりコミンテルンの指令・判断でもあったのでしょう。南部仏印への平和的かつ合法的進駐が、今以上にプロパガンダに利用されていたかもしれませんし、米領フィリピンをきちんとスルーできたかどうかもおぼつかない気はしないでもありません)

そもそも、上の動画で、海軍が情報を隠していたことを林氏はくりかえし非難していますが、海軍がそのような連中であることくらい、長年いがみあってきた陸軍なら、知っていてしかるべきではなかったでしょうか? 前々回前回で書いた通り、そんな相手の褌をアテにして、事前のすり合わせすらできていなかったのなら、どんな立派な計画も、早晩、破綻していたかもしれません。
秋丸機関の計画をあまりに完全無欠であるかのように絶賛する林氏の口吻には、正直、違和感も感じます。

しかし、それでも、太平洋戦争史観・十五年戦争史観・海軍善玉論などの悪質なプロパガンダが見なおされなければならないこと自体は、間違いないでしょうし、秋丸機関の存在と、その「扱われ方」について知っておくことは、その作業のために必要であり、有用でありうるようには思うのです。
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真実の日米開戦 隠蔽された近衛文麿の戦争責任
posted by 蘇芳 at 20:09|  L 大東亜戦争 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする