チャンネルくららから。
動画概要:
2016/04/26 に公開
薩摩藩、長州藩の莫大な軍資金の秘密とは・・?!
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動画でも原田伊織の名前が挙げられていましたが。
Amazon:明治維新という過ち 日本を滅ぼした吉田松陰と長州テロリスト〔完全増補版〕 (講談社文庫)幕府や会津のほうが偉かった、薩長はテロリストだという話は昔からあるでしょう。
当ブログでも、いち早く開国に舵を切った幕府こそ、攘夷だ何だと叫んでいた薩長より現実が見えていた、先見の明があったのではないかということは、こちらをはじめ何度も述べています。
と同時に、だから明治維新は不要だった、とまでは今のところまだ思えないということもくりかえし述べてきました。
動画でも言われているように、当時の日本、単に国内の政争に勝てばよいというものではない。真の敵は諸外国。欧米列強という名の「侵略宇宙人」です。
そのためには、こちらで考察したように、単に武器だけ溜め込めばよいというものではありません。軍そのものの「近代化」が不可欠。しかし、それは軍事政権の一種である幕府にとっては、体制の根本的な変革を意味します。動画で言われているように、天保だの享保だの寛政だのと中途半端な改革にさえ失敗してきたのが江戸幕府だとすれば、それ以上に根本的な変革を幕府自身の手で実施するなどということが、はたして可能だったでしょうか。
確かに幕府の役人は優秀だったでしょう。有能だったでしょう。しかしそれはどこまで行っても、既存の政体を維持管理運営していくうえでの優秀さ、テクノクラートとしての有能さであって、乱世の梟雄のごとき変革のエネルギーには乏しかったのではないでしょうか。
今も昔も官僚の本能は「保身」です。徳川300年の既得権益を一気に刷新するなどという芸当が、幕閣・官僚自身の手で可能だったとは容易に信じられません。
しかし、それをやらなければ、幕藩体制がずるずると続きます。果たしてそれで日清戦争や日露戦争が戦えたでしょうか? 私兵の統合にすぎない幕府軍は、殿様のためには戦えたとしても、はたして日本のためには戦えるのか? 大英帝国VS鹿児島県などという戦争を勝手に始めることさえできるくらいに地方分権だったのが幕藩体制。現場の独走可能性は、後の帝国陸海軍(国民軍)の比ではありません。大名同士の陰険なつのつき合いやサボタージュや功名争いや、不都合な状況はいくらでも思いつきます。その想像そのものが、疑心暗鬼となって、軍全体の手足を縛りかねません。たとえそれを克服して一意専心、軍事行動自体は可能になったとして、その後は? 土地を仲立ちにした封建制は、三国干渉(≒恩賞消滅)の衝撃によく堪ええたでしょうか?
慶喜の敗因が何だったのか、動画で言われているような「へたれ」だったのかどうかは、正直、よくわかりませんが……少なくとも、彼ら幕府側の人間が、幕府の持つ潜在力を使いこなせなかったことは事実でしょう。
大久保が倉山氏の言うような意味での「リアリスト」だというのが本当なら、そんな幕府の実情を見てどう考えたか? こちらやこちらのシリーズでも見た通り、官僚的有能さは、平時はさておき、有事にはかえって国を亡ぼしかねません。「リアリスト」であればあるほど、物事が見えれば見えるほど、幕府ではダメだという確信と焦燥を深めていったとしてもおかしくはないかもしれません。
とすれば、前回書いた薩摩の「変わり身」も、理解しやすくなるでしょうか?
「おりこうちゃん」な幕府の官僚的優秀さの対極にあるものこそが、頭のネジの飛んだ長州の激情であるとすれば……その長州のエネルギーと、大久保たち薩摩のリアリズムが手を組んだとき、明治維新という「奇跡」は、実現へ向けて大きな可能性を手に入れたのかもしれません。
(それが100点満点の正解だったか、といえば、むろん、異論もありうるでしょうが。。。)
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