2017年01月19日

【動画】「近衛上奏文を語る」藤井厳喜×倉山満


まさかこの本(「告発 コミンテルンの戦争責任 近衛上奏文と皇道派」)を扱った動画があるとは思いませんでした。
時代が(私が読んだ当時とは)変わりましたね……


動画概要:
2016/06/28 に公開
※動画に一部エラーがありましたので、再配信いたしました。
軍や政権内部にコミンテルンの謀略が仕掛けられ、勝ち目のない戦いに引きずり込まれたことを告発した「近衛上奏文」。今なお戦後レジームから脱却できない日本は、当時と何も変わっていないのでは・・?!

こちらこちらで引用した通り、「統制派」というのは、
「一君万民の社会主義天皇制を念願したことは、意識すると否とに拘らず明白な事実である。国家統制経済を採用し、農魚山村経済に力を注ぎ、その疲弊を救う」(『別冊知性』昭和三一年一二月号 河出書房)
ということを考えたわけですが、その統制派が国政を牛耳るようになったのが二二六事件の「結果」です。

その「結果」を完全にコントロールしていた黒幕がいたとまで言いはるといわゆる陰謀論ですが、陰謀そのものが存在しなかったということにはなりませんし、機会便乗的に蠢動した国賊もいたかもしれません。また、その国賊が国賊の自覚を持っていたかどうかも議論の余地が大いにあるでしょう。
こちらで確認した通り、後のゾルゲグループが「敗戦革命」を企図した謀略は実在したのですし、そもそもそれはこちらで確認した通り、レーニンによって実践済みの「赤」の常套手段でもあったのですから、なおさらです。

もっとも、統制派が上の引用に見るような存在であり、皇道派が相対的にマトモだったとしても、では、皇道派が完璧だったのかといえば、
我々は日本そのものの為の改造又は革命を以て足れりとするものではない。吾人は実に人類解放戦の大使徒としての日本民族の運命を信ずるが故に先づ日本自らの解放に着手せんと欲する
などと喚いていた北一輝の影響が皆無だったわけでもないのでしょうし(※皇道派を弾圧した側の言いがかり・牽強付会・巻き添えの類という可能性もありますが)、決起将校のための仲介に奔走して左遷された(二二六事件で排除された側)の橋本欣五郎なども、こちらで書いておいた通り、スターリンとヒトラーとアタチュルクの区別がついていなかったという思想的混乱については、統制派と大した違いもなさそうです。

結局のところ、誰が赤くて誰が白いのか、同じ赤でも確信犯のスパイは誰でこちらでいう「同伴者」「ロボット」は誰なのか、見極めがつかないカオスであることは間違いありません。

当の近衛文麿にしても、上奏文は本気だったのか、白々しいアリバイ作りにすぎなかったのか、こちらをはじめ縷々考察してきたように、見極めるのは容易ではありません。
近衛は死に(※動画で言われているノーマン云々については「歴史の書き換えが始まった!―コミンテルンと昭和史の真相 (日本の息吹ブックレット)」あたりがシンプルでわかりやすかったです。対談形式で読みやすいですし、薄っぺらいブックレットですし時間もかかりません)、木戸は生き延びた(そして戦後に容共発言をくりかえした)、というのも、それ自体胡散臭い事実です。

動画の中で倉山氏が言っている通り、「最終的」には鈴木貫太郎内閣によって、ようやく和平がなりましたが、しかし、藤井氏も言っている通り、占領初期というのは米国の共産主義者が好き勝手をやった時代。ならば本当には何も終わってなどいません。公職追放をはじめGHQの「好き放題」が、日本の赤さを払拭するどころか助長したのだとしたら、先日のこちらの敗戦利得の話と合わせて、戦前日本の「赤」の血脈は、戦後日本においてもなお現在進行形の問題でありつづけていることになります(それは動画の冒頭で言われている、歴史学会の赤さからも傍証できるでしょう)。

難しいからといって無視してはならないのが、この日本における「赤」の問題であり、大東亜戦争に対するその影響。それどころか、帝国陸軍の赤との結びつきが明石工作に始まるとすれば、日露戦争にくわえて、ロシア革命がいよいよ現実のものとなった第一次大戦、第一次大戦のあった大正年間の政治的混乱(こちらで書いたように15年間に10内閣が現れては消えていきました)なども、あらためて考え直さなければならないのかもしれません。
動画で指摘されている、日ソ中立条約と毛沢東、なども、そうですね。
後年毛沢東は日本が大いに手を貸してくれたことに対して一度ならず感謝の言葉を口にしている。
というのは、結果論的な皮肉、嘲弄の類にすぎないのか、はたして……といったところでしょうか。
こちらで述べたように日本における赤の心情的ルーツの一つがアジア主義だったのだとしたら、何があってもおかしくない気はします。

何にせよ、そんなカオスの中で、こちらのシリーズに言わせると、「ポイント・オブ・ノーリターン」だったというのが、二二六事件です。
共産主義の謀略という観点からそれを読み直し、真崎甚三郎の再評価を促し、木戸や西園寺にも嫌疑をかけていく本書は、(完全に同意するかどうかはともかく)、一読の価値はあるでしょう。
何なら、事件当日、真崎大将に同行した金子桂憲兵の証言に関する一節だけでも、目を通してみていただきたいところです。
それは、<車が高橋是清大蔵大臣私邸前を通過するとき、兵士によって踏み荒らされた雪中の足跡を見た真崎大将は、「これは赤の仕業だ」と言った>というのであるが、これは真崎大将の直感である。
この金子憲兵は、さらに真崎が青年将校を激励したとされて定説となっている「お前たちの気持ちはヨオック分かっている」ということについて、<真崎大将はそんなことを言ったのではない。「何という馬鹿なことをやったのだ」と叱りつけた。>と証言している。この事実を上司の大谷敬二郎隊長に報告しているが、全部削除されてしまったというのである。
事件後の軍事裁判で、真崎大将と対決した磯部浅一が入廷するや狂気のようになって、真崎に向かって、「閣下、とうとう彼等の術中に陥りました。」と叫んだことも、さきの真崎大将の車中で直感した発言と、陸相官邸前での金子証言と符節するものといってよいであろう。
著者の山口氏は「多くの二・二六事件と真崎大将を書いている人は、この金子証言をどこまで認めるのか認めないのか、問うものである」と結んでいます。
その答えの如何によっては二二六事件の「定説」の絵図は大きく変化するでしょうし、それは、一部自称保守に根強い三島由紀夫(磯部浅一の手記の影響が強いともいわれる「英霊の声」など)への盲目的崇拝などにも、微妙に影響していくのかもしれません。
告発 コミンテルンの戦争責任 近衛上奏文と皇道派
評伝 真崎甚三郎
日米戦争を起こしたのは誰か ルーズベルトの罪状・フーバー大統領回顧録を論ず
歴史の書き換えが始まった!―コミンテルンと昭和史の真相 (日本の息吹ブックレット)
共産主義黒書〈ソ連篇〉 (ちくま学芸文庫)
共産主義黒書〈アジア篇〉 (ちくま学芸文庫)
劣化左翼と共産党 SEALDsに教えたい戦前戦後史
昭和政治秘録 改訂新版 戦争と共産主義
昭和期の政治 (近代日本研究双書)
昭和期の政治 (続)
posted by 蘇芳 at 15:56|  L 大東亜戦争 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする