2016年12月20日

【動画】ムスタファ=ケマル(Historia Mundi の世界人物史)


「世界一の親日国」といえば台湾だったりパラオだったり、「世界一」がずいぶんたくさんあるようですがw
しばしばその一つに挙げられるのがトルコ。
エルトゥールル号やトルコ航空の話が有名で、つい先日も映画「海難1890 [DVD]」が製作され、ちょっとエルドアン政権に利用されたかな?という気がしないこともありませんが……親日美談に酔うだけでなく、多少は詳しいことも知っておいた方がよいかもしれない気もします。地理的にも黒海の出口を押さえている国ですし……第一次大戦の火種バルカン半島にまたがっていたり、現在の紛争地シリアのお隣だったり、わりと大変な場所でもありますからね。
ということで建国の父・アタチュルクで検索してヒットした動画を一つ。


動画概要:
2014/10/18 に公開
「人物史」ホームページはこちら!
https://historiamundipersona.blogspot.com/

第一次大戦に負けて領土を増やした、というだけでもアタチュルクがタダモノでないことは間違いありませんが。
「共和国」建国の父としての最大の功績の一つは「世俗主義」の採用ではないかとも思います。

文化的にはイスラム圏でありながら、一歩間違えば2020年の五輪はこの国に決まっていたかもしれない、というくらいにまで発展し、NATOにも加盟している。そんな国がイマーム制やカリフ制や、ましてイスラム原理主義などで築けるはずもなく、「世俗主義」の力が大きく作用していることは間違いないでしょう。

しかるに、この世俗主義を否定してイスラムに傾斜するかのような政策をとって、顰蹙を買った記憶も新しいのが、現職のエルドアン政権。
wiki:2013年トルコ反政府運動
Yahooニュース:トルコ暴動のワケ 五輪招致にも暗雲
エルドアン大統領といえば、映画「海難1890 [DVD]」にもいろいろとかかわっているほか、五輪誘致のときにも、事あるごとに安倍総理との親密さをアピールしていましたが……
親日云々はさておいて、実際のところエルドアン政権がトルコにとって、中東にとって、どういう存在なのか。といえば、不透明というか、危険な面がむしろ大きいのではないかという気もします。
シリア情勢の関連で、今となっては、トルコが五輪開催地候補だったなどという話が、嘘のように感じられますが……トルコの発展に世俗主義が寄与したことが間違いないであろうと同様に、現在のトルコ情勢の悪化の裏にイスラムへの傾斜があることもまた、間違いないのではないでしょうか。

トルコといえば、クルド問題もあるわけで、嘘か実か、クルド人がISと戦っている一方、エルドアン側はISとの関係を噂され、クルド人への「誤爆」も噂されるほどでしたし、あげくの果てがこれ↓ですからね💧
保守速報:
【閲覧注意】トルコでロシア大使が撃たれ死亡(ショッキング動画)
【ロシア大使銃撃】プーチン大統領、報復示唆「ならず者らに思い知らせる」
……ロシアというのは二正面作戦を嫌う国で、明治の昔にはバルカン情勢が落ち着いたから次は日本に向かってくると小村寿太郎が喝破したり、昭和の昔には独ソ不可侵&日ソ不可侵両条約をうまく使い分けて後顧の憂いをなくしたり、第一次大戦の時にはそういうロシアの性格を踏まえたうえで英国がシベリア出兵を要請してきたりした歴史がありますが……
東で日露首脳会談が終わったこのタイミングで西でコレというのもまたできすぎたタイミングのような気はします。プーチンなら平気でやりそうですしw

まあ、エルドアンやプーチンが何を考えているのか、事の真相など、私ごときにわかるはずもありませんが。

一口にトルコといっても国内には様々な勢力があって一枚岩でないことは当然なのですから、私たち日本の一般庶民もせめて「親日国」というレッテルだけで思考停止をしたりはしないように、知るべき歴史はきっちり知っておく必要があるでしょう。

ちなみに……

かつて、初代の大使館付き武官としてトルコにわたった橋本欣五郎は、後に「昭和維新」に身を投じますが……この浪漫主義的な掛け声もいろいろと果てしなく胡散臭く。橋本の著書においては、(トルコ人が知ったらさぞや激怒するのではないかと思いますが)、ヒトラー、スターリンとならぶ「偉大なる独裁者」として、アタチュルクの名が挙げられていたりするそうです。
(アタチュルク自身は民主化を志向しては失敗して「やむをえず」独裁せざるをえなかった人でしょう。友人に対立政党を作ってくれと頼んだこともあるそうで。やらせの出来レースが目的ででもないかぎり、本気で「まともな野党が欲しい」と現代日本の有権者のようなことを考えていたと見ることもできるようです)
「昭和維新」の「愛国者」たる「純粋」な青年たちは、少なくとも単なる「民間人」や「一般庶民」ではない、軍人であり官憲であり公僕であったにもかかわらず、アタチュルクとスターリンの区別がつかないくらいにはトチ狂っていた、という歴史は、反省しておいたほうがよいようにも思うわけです。

もちろん、日土友好の物語は大いに語り継いでよいわけで。アタチュルクにしても、若干伝説めいてはいますが、エルトゥールル事件を機にトルコにわたった山田寅二郎に日本語を習ったことがあるとか、大谷光瑞に資金援助を受けていたとか、そんな話もなくはないようですが……
しかし、だとしたらなおさら、トルコがそのアタチュルクの築き上げた世俗主義の伝統から逸脱して危険な方向へ進んでいる、という可能性は、それこそ日本にとっても由々しいことかもしれないのではないでしょうか?
海難1890 [DVD]
アタチュルク―あるいは灰色の狼
ケマル・パシャ伝 (新潮選書)
トルコ狂乱 オスマン帝国崩壊とアタテュルクの戦争
イスタンブールを愛した人々―エピソードで綴る激動のトルコ (中公新書)

追記:
アタチュルクが英傑なのはもちろんとして、その後継者もわりと大したもので。第二次大戦においては、第二代大統領イスメト・イノニュは、ソ連の脅威を口実にぎりぎりまで中立を保ちつつ、しかし最後の最後には連合国として参戦(1945年2月23日)、ほとんど戦禍を被ることなく、チャッカリ戦勝国に収まった、という……そんな世渡り上手な歴史を持っているのもトルコという国だったようです。
ちなみに「後継者」といっても、アタチュルク自身は別の人物を指名していたようですから……その意向が実現しなかったことからも、橋本欣五郎が夢想した「独裁者」はやはり失当だった、と言っていいのかどうなのか。
何にせよ、歴史的にロシアの宿敵でもあったトルコ、参戦忌避の言い訳さえ、後の東西冷戦を先取りしていたとも言えるかもしれません。エルトゥールルがどうのこうので悦に入っている場合ではない、大した国というべきでしょう。その歯車が今になって狂い始めているとしたら……やはりどうにもわりと大変なことになるのかもしれませんねぇ💧
posted by 蘇芳 at 21:55| 未分類 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする