2016年06月03日

【動画】「御製から見る日本」第9回 知られざる大正天皇のご活躍 〜文化継承のために〜


CGS 御製シリーズ第九回。



動画概要:
2015/05/21 に公開
今回は大正天皇の御製をご紹介致します。
大正天皇は在位期間が短く(14年5ヶ月)、あまり良く知られていない天皇ですが、こ­の頃には社会主義運動など様々な世間の動きがありました。
そのような中で大正天皇は文化を大切にされ、時代に流されて主要な新聞から漢詩がなく­なって行く中で1367首もの漢詩を作られ、思想の国難と戦いました。

かきくらし雨降り出でぬ人心くだち行く世をなげくゆふべに
動画でも言われているとおり不当に軽視されている天皇であらせられると思います。
理由としては動画でも言われているとおり、御在位が短かったことや「病弱」説、明治・昭和両帝の印象が強すぎることなどがあるのかもしれませんが、もう一つ左翼捏造史観の作意もあるのではないでしょうか。
反日勢力は昭和の「侵略」の歴史を捏造しますが、その「侵略」の前史という先入観をもって大正の御代を定義する倒錯を犯しており、私たち一般人も情報不足からそれに引きずられていたのではないでしょうか。
こちらでも述べたように、大正時代には、第一次大戦の勝利があり、ロシア革命という暗黒の歴史がありました。米国が共産主義を民主主義の一変種であるかのように錯覚したのもこの時代です。反日勢力にとっては歪曲・隠蔽・捏造したい史実のオンパレードです。

たとえば植松三十里「大正の后(きさき)」などは、史書ではなく小説ですが、まさにその左翼捏造昭和暗黒史観に立って第一次大戦参戦を非難しており、日英同盟を裏切るべきだったと力説する奇矯な本です。そしてその日本の「侵略」という「絶対惡」から主人公たる貞明皇后とその夫君たる大正天皇を救済するために、お二方を脳内お花畑の白痴的空想平和主義者に仕立てあげています。これは小説にすぎませんが、司馬史観()の禍毒を思うとき、俗説の流布として、かえって悪質です。
(わざわざフランス革命に言及しておきながら、目の前で起きたロシア革命には一言の言及もないという愚劣な「小説」でもあります)

しかし、大正天皇が第一次大戦参戦内閣の首班・大隈重信をご信任になり、長時間話し込まれることもあったことは有名な挿話です。
こちらで言及した国連での「大活躍」をもたらしたのも、愛国保守が大好きなパラオが日本の委任統治領になり現在にまでつづく友情の基礎が築かれたのも、第一次大戦の勝利の結果です。
もちろん、いやしくも日本の天皇ともあろう方が、平地に乱を起こすことをよしとされるはずもありませんが、いやしくも日本国天皇陛下ともあろう御方が、かつて日露戦争で多大な助力を与えてくれた同盟国を裏切るべしなどという外交的背信を是とされるはずも断じてありえません。
 遠州洋上作

夜艨艟に駕して遠州を過ぐ
満天の明月思い悠悠
何れの時か能く平生の志を遂げ
一躍雄飛せん五大洲
かつて上のような気宇壮大な御製詩をお作りになった大正天皇。
パヨクのような馬鹿者ではありません。

大正天皇は約3000もの漢詩をお作りになったと言われています。
相当お好きだったのでしょうし、馬鹿者に白文が書けるはずもありません。
一方で、和歌は苦手だとご学友に漏らしておいでになったとも言いますが……
実際に御製を拝誦してみると、しみじみとした余韻のある秀歌に事欠きません。
木の下に立つとみし夜の夢さめて枕にのこる松風の音
雪はれて月かげきよみしろがねのつくり花ともみゆるうめかな
こゝかしこ白きは百合の花ならむもや立ちこむる谷かげの道
月かげにさばしる鮎のかげみえて夏の夜川ぞすゞしかりける
吹く風に薄みだれてさきに行く人の姿のみえかくれする
などなどは、天皇の御製だからありがたい、という以前に、一個の詩人・歌人の「作品」として鑑賞することのできる御作ではないでしょうか。
これらの御製を拝して、なお、動画でも言われている天皇の「聡明」さを、疑う余地があるでしょうか。

また、御在位が短い、というのも、単純にすぎる先入観、偏見の類であるかもしれません。
大正の御代は確かに15年しかありませんでしたが、大正天皇の御生涯が十五年しかなかったわけではありません。
フレドリック・R. ディキンソン「大正天皇―一躍五大洲を雄飛す (ミネルヴァ日本評伝選)」によれば、御晩年はあまり行幸の機会もなくなられた明治天皇に代わって、そのはつらつとしたお姿を国民の目に印象付けられたのは、皇太子時代の大正天皇であらせられたと言います。
ディキンソンは当時のメディアにあらわれた「パブリック・イメージ」を通して、明治の終盤において、皇室の「アイコン」と化していたのは、すでに皇太子だった、と論じています。

動画でも日本の歴史家は日本の特殊性を知らない、と指摘されていますが……
今、あえて西暦に注目して見ると、皇孫迪宮裕仁親王殿下(昭和天皇)の御降誕は、西暦1901年四月二十九日。大正天皇と貞明皇后の御成婚はその前年、西暦1900年五月十日。
日本の19世紀は皇太子の御成婚をもって有終を飾り、日本の20世紀は皇孫殿下の御降誕を以て幕を開けたのです。
それは、20世紀の皇室、新時代の皇室を象徴するに足る、今風に言えば「皇太子ご一家」の肖像ではなかったでしょうか。

「伊藤は朕に洋服を着せて、自分は着物を着るのか」と仰せになった明治天皇が、御本心では何事も日本風をお好みであらせられたのに対して、西洋風に抵抗感をお持ちでなく、むしろお好みであったといわれている大正天皇は、皇室における一夫一婦制の事実上の創始者でもあらせられます。
幼い迪宮殿下のお手をお引きになっている有名な写真がありますが、現代の「家庭的」な「皇室ご一家」の流儀は、その多くが、大正天皇によって端緒を開かれたものでもあると言います(それが良いか悪いかは別として)
もちろん「西洋風」などがそれほどありがたいものであるわけでもありませんが、こちらで見た人種差別と侵略の時代に、それら独善の権化たる西洋列強と対等に伍してゆくために、大正天皇のはつらつとしたイメージは、何程かの貢献をお果たしになった、と、考えてみることは有益であるように思います。
日本が国連常任理事国中唯一の有色人種国家として、「一等国」として、まさに「雄飛」せんとした時代。
大正天皇とは、実は、現代の私たちが思いこまされている以上に、大きな足跡をおしるしになった天皇であらせられたのではないでしょうか。

いずれにせよ、「20世紀の始まりを告げる国際社会における天皇」というのは、元号にとらわれていては、気づきにくい「イメージ」です。
そして、こちらで軽く言及しておいたように、西洋史においては、(日本が大正天皇の統帥下で参戦した)第一次大戦こそが「20世紀の始まり」と位置付けられ、第二次大戦よりもむしろ本質的に重要とされることも多々あることを、知っておくのも悪くないかもしれません。


もちろん、そうして始まった「20世紀」が激動の時代であり、昭和が苦難の時代だったことは確かですが、その結果から遡及して大正の御代を捻じ曲げることは慎むべきでしょう。ましてその「激動」や「苦難」をして日本の「悪」と断ずる歪曲・捏造から出発するなど、言語道断です。
おほみやびうた―大正天皇御集
大正天皇漢詩集
大正天皇―一躍五大洲を雄飛す (ミネルヴァ日本評伝選)
日本征服を狙ったアメリカの「オレンジ計画」と大正天皇―東京裁判史観からの脱却を、今こそ!

追記:
とはいえ、「詩人」「歌人」として鋭い感性をお持ちであったようにお見受けする大正天皇。
その「感性」の鋭さゆえに、御晩年の御製には、暗い影が忍び寄っているような気がしてしまうのも、事実ではあるかもしれません。
降る雨の音さびしくも聞ゆなり世のこと思ふ夜はのねざめに
は大正8年の御製、
動画で引用されている御製、
かきくらし雨降り出でぬ人心くだち行く世をなげくゆふべに
は大正9年の御詠。
何を御軫念あそばされていたのでしょうか。。。

大正天皇の御病状悪化に伴う、皇太子迪宮裕仁親王殿下の摂政ご就任は、その翌大正10年十一月二十五日のことでした。
そのご体調を反映するかのように、御製集「おほみやびうた―大正天皇御集」に収録されている大正10年の御製は、年頭の歌会始における、
神まつるわが白妙の袖の上にかつうすれ行くみあかしのかげ
一首だけ。翌年以降の御製は収録されていません。
他に未公表の御製がある可能性もあるかもしれませんが、事実上、これが大正天皇の御遺作・御絶詠ということになるのでしょうか。
この年の歌会始の題は「社頭暁」。
確かに夜明けの情景をお詠みになっているのですが、それを神前の「みあかし」がうすれていくと表現されているところに、詩的というだけでは足りない深すぎる余韻・余情・陰影のようなものを感じるのは、文学的素養皆無の私の気のせいでしょうか。

ちなみに、同じ歌会始における、皇太子殿下の御歌は、
とりがねに夜はほのぼのとあけそめて代代木の宮の森ぞみえゆく
だったそうです。
御父帝に比べれば、素直な文字通り「ほのぼの」とした生気に満ちた御歌ではないでしょうか。
「世代交代」は間近に迫っていました。

ちなみに「代代木の宮」というのは明治神宮のことで、大正9年十一月一日に造営成って御鎮座大祭が行われています。
皇太子殿下の摂政就任、事実上の昭和の幕開けは、御祖父明治大帝の祭祀から始まった、とも、言えるのかもしれません。まさか明治神宮が摂政宮のご就任に合わせて創祀されたわけでもないでしょう。タイミングとしては偶然であるはずです。が、そこに運命的・予兆的なものを感じてしまうのは、歴史に関心を持ってしまった日本人としては、致し方のないことかもしれません。
posted by 蘇芳 at 02:23|  L 「CGS 御製から見る日本」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする