2016年04月24日

【動画】二十二社


こちらで見た通り、南都の仏教勢力との決別を意味した平安遷都後にまたぞろ新仏教が育成されたことの背景には、神道に対するスタンスの問題があったように思います。
皇室・神道抜きの日本史が、いかに不完全なものか実感する今日この頃です。
また、左翼反日捏造教科書には出てきませんが、平安京においては、仏教だけでなく、神社祭祀も整備されていったはずです。
都が置かれる以前の京都というのは、つまり「ど田舎」だったわけで、現在の京都に見られる神社の数々は、遷都後に創建されたものがほとんどであるはずです(もちろん、ルーツをたどればそれ以前、というものも多々あるでしょうが。松尾大社などはその一例ですね)。

平安遷都に先立つ延暦三年(皇紀1444・西暦784)、長岡京遷都に際しては、賀茂下上社に神階従二位を、松尾社に従五位を贈り、社殿を修理されたといいます。
松尾社は渡来系の秦氏が氏神として祀っており、この秦氏が長岡・平安両京の造宮に際して職能集団として貢献したことはよく知られていると思います。
(その後、賀茂社に対しては大同元年(皇紀1466・西暦806)、松尾社に対しては貞観8年(皇紀1526・西暦866)、正一位を贈られています)。
平安京の東西に位置するこの両社は「東の厳神・西の猛霊」と並び称され、平安京を守護する神として崇敬されたと言います。

延暦13年(皇紀1454・西暦794)の平安遷都に際しては、それ以前からその地に鎮座していた園・韓神社を官社とし、桓武天皇の母方の氏神である平野社も創祀されました。

平安京の鎮護といえば、政治史的にはその後の「山法師」の跳梁などもあり、鬼門封じの比叡山がまず真っ先に浮かびますが……
神社もまた新都の守り神として、国家的に整備されていったのでした。

以後、300年以上つづく平安時代において、官幣・国幣の制度、名神奉幣、氏神社での公祭(特定氏族の祭祀に公的機関が関与する)など、国家レベルでの祭祀制度があらためて整備されていきました。
こちらで述べたように国家による公的な祭祀のあり方は律令に規定されていましたが、その施行細則である格・式が次々に編纂、更新されていったのもこの時代です。
「弘仁格式」「貞観格式」「延喜格式」などですが……このうち、ほぼ完全な形で現存するのが、醍醐天皇の御代に編纂された「延喜式」です。

醍醐天皇の御代は後年、延喜の治として理想化されていきますが、平安時代は摂関家の増長によって天皇親政が困難になっていった時代でもあります。
権政方面から見れば延喜・天暦の治の理想化は討幕の「ためにする」類の強引さが無いでも無いですが……
政治的に困難な状況にあればこそ、かえって自覚的に「天皇」たろうとされ、祭祀に熱心にならせられた天皇が御歴代に多かったことは事実かと思います。特に臣籍から皇籍に復帰して即位された宇多天皇・醍醐天皇は、そうした思いを強くお持ちであったかもしれません(幕末に傍系の宮家から即位された光格天皇なども、かえってそのために「天皇」としての正統性に自覚的であらせられ、朝議・朝権の復興にご熱心であらせられたのもそのためだ、と見る向きもあるようです)。

神仏習合の時代にあってなお宮中祭祀と伊勢神宮だけは神仏隔離を維持しつづけたことはこちらでも触れましたが、こうした「天皇」による祭祀が平安時代を通じて維持され、民間の神社祭祀とも関係を保ち続けたことは、日本の国柄にとって、幸いなことではなかったでしょうか。

醍醐天皇の御代には、伊勢・石清水・賀茂(上下)・松尾・平野・伏見稲荷・春日・大原野・大神・石上・大和・広瀬・龍田・住吉・丹生・貴船の十六社に対して勅使を差遣して奉幣する制度がはじまり(十六社奉幣)、後年、さらに追加されて、最終的には、吉田・北野・広田・梅宮・祇園・日吉を加えた二十二社奉幣の制度が確立しています。

伊勢は言うに及ばず、丹生川上神社は神武天皇の御代に、大神神社は崇神天皇の御代に、広瀬・龍田は天武・持統天皇の御代に、いずれも正史に記録が見られますが、そうした皇室と直接に縁が深い神社はもちろん、秦氏や藤原氏など有力豪族の氏神、北野・祇園などの御霊信仰、仏教とも縁が深く応神天皇と同一視もされる八幡宮などなど、さまざまな性格の天神地祇が「天皇の祈り」の下に束ねられていると言えるのではないでしょうか。

最澄も空海も末法思想も極楽往生も無常観も結構ですが、こうした神道の歴史、何より皇室の祈りの歴史も、忘れずに押さえておきたいところです。


動画概要:
2010/07/29 にアップロード
平安時代(11世紀後半)に整った二十二の神社。
伊勢神宮(内宮・外宮)、石清水(いわしみず)八幡宮、
賀茂神社(上賀茂神社・下鴨神社)、松尾(まつのお)大社、平野神社、
伏見稲荷大社、春日大社、大原野(おおはらの)神社、
大神(おおみわ)神社(三輪明神)、石上(いそのかみ)神宮、
大和(おおやまと)神社、廣瀬神社、龍田(たつた)大社、住吉大社、
日吉大社、梅宮(うめのみや)大社、吉田神社、廣田神社、
八坂神社(祇園社)、北野天満宮(北野天神)、
丹生川上(にゅうかわかみ)神社(上社・中社・下社)、貴船神社
わかりやすい神道の歴史
日本神道史
延喜式 (日本歴史叢書)
平安時代の神社と祭祀
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日本は天皇の祈りに守られている
ラベル:神道 平安時代
posted by 蘇芳 at 01:25| 平安時代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする