2016年02月23日

【読書】ハミルトン・フィッシュ「ルーズベルトの開戦責任」

 

こちらで近衛文麿が、
こちらが蒋介石が、
共にスターリンの手先だったという話を見ました。
では、残る米国のルーズヴェルトは?

ということでまずは本を一冊紹介します。
ルーズベルトの開戦責任: 大統領が最も恐れた男の証言

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ルーズヴェルトの政敵、共和党のハミルトン・フィッシュの著書です。

ヴェノナ文書公開以前の著作であり、スターリンの謀略網にそこまで深く切りこんだものではないかもしれません。
しかし、裏を返せば、ヴェノナ文書やGRU文書やミトロヒン文書が公になるはるか以前から、知っている人は知っていた。冷静に史実を見れば、米国の愛国者なら、真実にたどりつくことは可能なのだ、と感じさせてくれる著書でもあります。

(にもかかわらず、長年、米国一般国民の歴史認識が愚劣の域を出ることがない、ヴェノナ文書公開以後でさえ相変わらず捏造史観にしがみつき、敵国の間接侵略に侵されつづけている、という事実は、何を物語っているのか、考えてみるのもよいかもしれません。米国のファーストレディがシナ大陸の独裁国家で上機嫌で赤い布を振り回していた↓のは、遠い昔のことではありません。
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さすがに最近、特に安倍政権復活後は、米国全体としては多少の覚醒ははじまっていると思いたいところですが)

欧州というのは長年もめごとをくりかえしてきた地域で、仲が悪いといえば悪いですが、地続きで国境も曖昧、信仰は共通で、王家は縁続きですから、日本でいえば戦国時代のようなもので、もめるならもめるなりに、もめ方の作法というか、暗黙のルールのようなものはあったようです。

しかし、そうした古き良き(?)時代は、世界大戦の到来とともに、過去のものとなったようです。

第一次世界大戦の開戦事情については、日露戦争が生んだ四国協商と、それに対する窮鼠猫を噛む式のシュリーフェンプランについて、こちらこちらで指摘しておきました。
もちろん、それは一つの見方、それも最近の知見を加味した見方であって、ハミルトン・フィッシュ自身は、第一次世界大戦の開戦原因はよくわからないと告白しています。
欧州の歴史上、サラエボ事件のような危機はいくつもあったはずですが、オーストリアとサラエボの二国間問題にすぎなかったはずの危機が、全世界的な大戦に発展することなど、かつてはなかったはずだ、と。
にもかかわらず、いつもの揉め事として始まった戦争は、このときにかぎって、それまでとは規模の違う・質的に異なる大戦争に発展し……どうやら戦後処理もこれまで通りというわけにはいかなくなったようです。
(日本では戦後左翼の歪曲・捏造・隠蔽によって忘れ去られたようになっていますが、欧米では第二次よりむしろ第一次大戦のほうが重要視されることも多いということを知っておくべきでしょう。歴史的には第一次大戦こそは「20世紀の始まり」と位置付けられることもあるのだとか。世界は質的に変わったのです)

ドイツが和を乞うたとき、仲介に立ったのは米国でした。米国はドイツに対し、温和な条件で講和することを約束します。が、これに異を唱えたのが英仏、特にフランスでした。ベルサイユ条約はドイツに対して過剰に懲罰的な内容になり、次の戦争の種を蒔くことになりました。
ドイツでは臥薪嘗胆・失地回復の気運が強まりますし、メンツをつぶされた格好の米国では「欧州のことなどもう放っておけ」という空気が大勢を占めるようになります。
また、フィッシュに言わせると、ダンツィヒをはじめとする後のナチス・ドイツの領土的要求はドイツの側に理があるという見方も識者の間では優勢だったとか。
英仏両国の内部にも、ベルサイユ条約への批判は潜在していたのでしょう。やがてドイツがラインラントに進駐し、オーストリアを併合し……失地回復のために実力行使を始めたとき、英仏両国は融和政策を取り、ドイツの行動を容認しました。
しかし、事がダンツィヒの帰属問題に及ぶと、英仏両国、そしてポーランドも一転して強硬姿勢に転じ、それまで不倶戴天の敵だったはずの独ソの接近、ついにはドイツの西進を招くことになり、ここに第二次世界大戦の火蓋が切って落とされます。

第三帝国を名乗るヒトラー・ドイツ(国家社会主義)と、帝政ロシアを滅ぼし皇帝の一族を虐殺した共産主義・ソ連とは、本来、水と油でした(社会主義と共産主義の正体・区別など、論壇を左翼売国奴に牛耳られた戦後の日本人にはわかりにくいですが、本人たちには譲れない何かがあるということか。どの道、左翼にとって内ゲバは第二の天性です)
ドイツの強制収容所というとユダヤ人の被害者意識ばかりが強調されますが、本来のターゲットは共産主義者です。この時点ではまだユダヤ人問題の“最終的解決”も実行されていませんでした。
ドイツも英仏との戦争など本来は望んでいませんでした(これはフィッシュ自身の個人的観測ですが、実際にリッベントロップ独外相との会談に臨み、そのことについては確信を持ったと書いています)。
英仏も当初はドイツに対して融和政策を取っていました。

その英仏がなぜダンツィヒにかぎって強硬姿勢に転じたのか?
独ソ両国に挟まれ独力では軍事的に対抗し得るはずもないポーランドまでなぜ外交解決の道を選ばなかったのか?

ルーズベルトがそれを教唆したのだ、と、フィッシュは断言します。
証拠のない話ではありません。
むしろ、証拠・証言によってそれを立証するために、本書は書かれています。
米国の外交官はもちろん、英仏の政治家の回想にもルーズベルトの「確約」についての証言はいくつもあるそうです。
また、ポーランド駐米大使イェジ・ユゼフ・ポトツキが本物であると証言した報告書には、
フランスとイギリスは全体主義国家とはいかなる妥協もしてはならない。それが大統領(ルーズベルト)の断乎たる考えである。両国は、どのような形であれ現行の領土の変更を狙う(ドイツとの)交渉に入ってはならない。その要求の代償として、両国に対してアメリカは倫理的な約束(the moral assurance)をしている。それはアメリカは孤立主義を止め、戦争が起きた場合には積極的に(actively)英仏の側に立って干渉(intervence)する、というコミットメントである
という密約が明示されているとのこと。ポトツキ報告書の日付は1939年1月16日。この時点で、米国民の80~90%は参戦に反対であり、ルーズベルトもけして参戦しないと国民にくりかえし約束していました。ルーズベルトは米国民を騙し、裏切ったわけです。

ルーズベルトはなぜそうまでして戦争がしたかったのか?

ドイツが英仏と戦端を開いたことは、ただソ連にとってのみ幸いでした。
ロシア軍の将校はスターリンによって大量粛清され、赤軍は弱体化していました。不倶戴天の敵ドイツがソ連に背中を見せてくれているあいだに、戦備を整えることができます。

ルーズベルトの周囲にはレックスフォード・タグウェル、ヘンリー・ウォーレス、シドニー・ヒルマン、ハリー・ホプキンス、アルジャー・ヒス、ハリー・デクスター・ホワイト、ラクリン・カリー、といった左翼、共産主義者、過激派、社会主義者などが蝟集しており、そのうちの何人かはソ連のスパイだったことが確定しています(こちらの動画に登場していた名前もありますね)。
ニューディール政策自体も、多額の公的資金を導入して大きな政府・福祉国家を目指すもので、社会主義的な政策であるとも言われています。

ルーズベルトの親しい友人であったフランシス・スペルマン枢機卿は以下のようなルーズベルトの発言を報告しています。
「スターリンはフィンランド、バルト三国、ポーランドの東半分とベッサラビアを取るであろう」
「中国は極東地域を、アメリカが太平洋地域を取り、イギリスとロシアがヨーロッパとアフリカを分割する。英国が世界に植民地を確保していることに鑑みると、ロシアがヨーロッパのほとんどを勢力下におくことになるだろう」
「もちろん希望的観測と言われるかもしれないが、ロシアの勢力圏下にあってもその支配のやり方は穏健になるだろう。共産主義の勢いは今後とも強まるであろう。フランスについて言えば、レオン・ブルムが政権をとっていれば、共産主義者はそれで十分だと考える可能性がある」
「ロシア経済が見せた驚くべき躍進を見逃すことはできない。ロシア財政は健全である。ロシアの勢力下に入るヨーロッパ諸国はロシア的システムに舵を切るのに激しい変革が必要になろう。ヨーロッパ諸国は、つまりそれはフランス、ベルギー、オランダ、デンマーク、ノルウェーに加え現在の敵国ドイツとイタリアも含むのであるが、ロシアの影響下で生きることに耐えなければならない」
ソ連に侵略されたフィンランドはソ連にくれてやろう。フランスは今現在フランスのために戦っているド・ゴールではなく、レオン・ブルムに統治させよう(もちろん、フランス国民には一言も相談などしていません)。
“全体主義国家”とはいかなる交渉もするなと英仏に要求したルーズベルトは、ソ連という“全体主義国家”にはずいぶんと甘かったようです。

後のヤルタ会談で、ルーズベルトは実際にスターリンの要求を丸呑みします。死期が迫っていた(そしてそのことを国民に隠していた)ルーズベルトをヤルタで積極的に補佐したのは、ハリー・ホプキンスであり、アルジャー・ヒスでした。やはりこちらの動画に登場していた顔ぶれですね。

ルーズベルト自身は、共産主義者ではなかったとフィッシュは書いています。
フィッシュに言わせると、ルーズベルトは教養のない権力欲だけの「政治屋」であり、そもそもまじめに「主義」などというものを持てるほどの器ではなかった、のだとか。
しかし、共産主義者でなかったとしても、容共的ではあり、共産主義者やソ連工作員に国政の重要ポストを独占させ、この時期の米国はあたかもスターリンの犬のようになっていったことは事実でした。
ルーズベルトの娘の回想から推測される彼の究極の目標は、スターリンと仲良く世界を半分こにしたうえで、国連のトップに君臨することだったそうです。
まるでどこかの“世界大統領”のような妄想的な野望ですが……卑しい人間の発想とはその卑しさゆえに似通ったものになるのかもしれません。
ルーズヴェルトの「動機」はともかく、この米国史上最低最悪の大統領が、世界の半分をスターリンに売り渡したという「犯罪事実」があったことは、ここまで本書を読み進めれば、いずれにせよ、確からしく思われます。

しかし、ルーズベルトがその「犯罪」を実行するにあたっては、その行く手に立ちはだかる巨大な敵が存在していました。
米国民です。

くりかえしますが米国民の80~90%は参戦に反対していました。
彼らは第一次大戦の結果に幻滅していましたし、ドイツの要求に正当性を感じていましたし、そもそもダンツィヒがどこにあるのかさえ米国民の大半は知りもしませんでした。
公金バラマキニューディール政策で米国の借金は膨大な額に達し、失業率は実は横ばいのまま改善していませんでした。
庶民にしてみれば、まったく戦争どころの状況ではありません。
自分たちの生活さえままならないというのに、遠い欧州の下らないパワーゲームになぜ米国民がまきこまれ血を流さなければならないのか?

この世論を一挙にくつがえし、裏口からの参戦を可能にするためにルーズベルトが仕組んだのが、日米開戦、すなわち真珠湾の謀略だったのだ、と、フィッシュは言います。
ルーズベルトは日本に最後通牒をつきつけ、暗号解読によって真珠湾攻撃を知りつつ、現地への警告を行わせず……そのすべてを米国民に対してはひた隠しにして、日本の「和平交渉継続中のだまし討ち」をでっち上げました。
当時の米国民は、ハル・ノートの存在さえ知りませんでした。もちろん、それが二つあったことや、それを書いた者たちが、後世のヴェノナ文書が名指しするソ連のスパイだったことなど、知る由もありません。
米国民がコロッと騙されたことは、今さら言うまでもない衆知の事実でしょう。
フィッシュ自身、例外ではありませんでした。

ルーズベルトの「恥辱の日」演説は喝采を博します。
真っ先にこれに賛同し、対日開戦の議決を呼びかけたのが、ハミルトン・フィッシュその人でした。

フィッシュは後に真実を知ってこのときの自身の行動を恥じ、深く後悔しますが、非干渉主義者の筆頭でありルーズベルト最大の政敵であったはずの共和党ハミルトン・フィッシュが、党派を超えて大統領の手を取り、参戦へと転じた効果は絶大でした。
このときから、大英帝国を崩壊させ、欧州の半分を共産化し、アジアを共産化し、朝鮮・ベトナム戦争の導火線となり、やがてはアフリカ・南米をも共産化させようという、スターリンのための戦争に、米国民が動員され、三十万の戦死者・七十万の戦傷者の血が流されることになっていくわけです。

本書は、フィッシュのその「後悔」が書かせた一冊であるようです。
その「後悔」とは、「米国の売国奴」の虚偽を見抜くことができず、彼らの裏切りから祖国を守ることができなかった、「米国の愛国者」としての「後悔」であり「憤怒」であるのだろうと思われます。

フィッシュがルーズベルトを告発するのは、米国民を欺き、国民の望まない戦争を起こしたこと。議会決議を経ずに最後通牒を発したこと(大統領にそんな権限はない)。すなわち合衆国憲法を踏みにじり、建国の精神をないがしろにしたこと。要するに言葉のあらゆる意味で「アメリカ」を裏切ったことについてです。

つまり、本書はあくまでも「米国の正義」にかかわる著作です。
その流れの中で、対日外交の誤りも、率直に認めているのが本書ですが、いわゆる親日米国人が日本のために書いて「くれた」というわけではないことは、認識しておくべきでしょう。

むしろ、本書が第一義的に米国のために書かれた結果、対日政策の過ちを認めている、ということのほうが、単なるおためごかしより、はるかに重要です。
なんとなれば、それは、米国と日本の利害は一致する、米国と日本の敵は同じだ、ということを、意味する事実でしょうから。

ルーズヴェルトは、米国の敵だ、と、米国の愛国者自身が告発する、ということ。
それは、近衛文麿は日本の敵だ、と、日本の愛国者が告発することと、パラレルです。
そして、それぞれの敵の親玉を探っていけば、いずれ共通の敵=スターリン=ソ連=共産主義に行き着くのです。

こちらで書いた通り、東京裁判の愚劣こそが、米国の国益を損ない続けてきた、というのが、戦後70年の歴史的事実です。
歴史の真実を取り戻すことは、米国民自身にとって必要不可欠なことであり、日本のためではない、他人事ではない、ということに、彼らはいいかげん気づいてもいい頃合いです。

本書はそうした「米国の愛国者」による「米国の売国奴」に対する「怒り」と「告発」の先駆的著作であると言えるでしょう。
そして、ヴェノナ文書をはじめとする機密文書の公開によって、その立論の多くに、「裏付け」が与えられて、現在に至っているのだとすれば……
今こそ、読み返し、先駆者の慧眼に敬意を表すべき一冊ではないでしょうか。

欧米の(まともな)歴史家たちのあいだでは、機密文書の公開を受けて、共産主義謀略の解明もようやく盛んになりつつあるとも聞かないことはありません。
立ち遅れているのは曲学阿世の左翼売国奴に牛耳られたとある極東の島国の似非歴史学会のほうかもしれません。
ならば、日本人である私たちもまた、フィッシュの「怒り」に多くを学ぶことができるのではないでしょうか。

「米国の売国奴」と「日本の売国奴」、それが同じ反日反米勢力の手先であるという構図自体は、現在も過去と何ら変わってはいません。
「米国の怒り」と「日本の怒り」、
「米国の正義」と「日本の正義」、
それらはこの局面において、本来、一致しうるはずですし、むしろ現に一致しているのではないでしょうか?

その「一致」への覚醒を妨げようとする、虚偽と捏造と歪曲に立ち向かうことは、現在の私たち世代の責任であるように思える……と、だいたい大体そんなようなことを考えさせられた一冊でした。

盛りだくさんの名著なので、是非、より多くの方に手に取って一読していただきたいと思います。


ルーズベルトの開戦責任: 大統領が最も恐れた男の証言

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追記:
フィッシュは外交経験から、欧州事情には詳しかったようですが、極東情勢についてはどのていど知っていたのか、今一つ頼りないところはあります。
蒋介石(西安事件以後共産党の傀儡だった)を米国の「友人」と言ってみたり、近衛文麿は驚くほどの「平和愛好家」であると言ってみたり、彼らの正体に気づきつつある現在の私たちから見れば、物足りなさはあります。
が、それこそ時代の制約というものでしょう。
フィッシュの始めた仕事を、新しい知見・証拠を加味して、さらに発展・深化させていくことこそが、後世に託されているのだと思います。
そのためにも、必読の一冊ではないでしょうか。
posted by 蘇芳 at 01:43|  L 大東亜戦争 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする