推古天皇につづく、史上二人目の女帝、皇極・斉明天皇。
史上初の「譲位」「重祚」を行われた帝でもあります。
この帝の御代も、もちろん、後継者の「不足」になど悩まされていたわけではありません。
女帝を要請し、その重祚をも必要とした時代の本当の「危機」とは、それでは、何だったのか?
推古天皇と同様に、皇極天皇もまた、皇位継承者の不足や不在ではなく、複数の皇位継承候補者がおいでになる状況で、豪族たちの思惑が絡み合い、正式な後継者が決められないために、「中継ぎ」として即位されていることが動画からわかります。
蝦夷・入鹿の逆臣が除かれ、皇位継承者が定まると、ただちに譲位されていることからも、女帝の即位に「緊急避難」的な性格が強かったことが感じられるのではないでしょうか。
しかし、蝦夷・入鹿の討伐をもってしてもなお、(大勢は決したとはいえ)、豪族同士の角逐は、完全には終息しなかったのでしょうか?(動画はそう解釈しているのか?)
というのも、このとき、軽皇子、古人大兄皇子、中大兄皇子という三人の継承候補者の間で、皇位の「譲り合い」が起きており……純粋な互譲の精神による譲り合い自体は、これ以前の歴史でも、多数の例があるのですが、このときの経緯には中臣鎌足の一言が微妙なあやを投げかけているのです。
「古人大兄皇子は殿下の兄上です。軽皇子は殿下の叔父上です。古人大兄がおいでになる今、殿下が皇位を継がれたら、人の弟として兄に従うという道にそむくでしょう。しばらく叔父上を立てられて、人々の望みに叶うなら良いではありませんか」(宇治谷孟訳)この訳文からは、鎌足が軽皇子を、「しばらく」のあいだだけ皇位を貸しておく、臨時の神輿と見なしているように読めますし、その本当の焦点は古人大兄皇子の存在だったようにも思えます。
(古人大兄皇子の母は蘇我馬子の娘・蘇我法提郎女ですから、相当に難しいお立場です)
そのようにして、やりすごし、機会をうかがわなければならないだけの事情が、当時の情勢にはまだあった、と、見なすべきではないでしょうか。
結果的に、蝦夷・入鹿討伐に実際の功をあげた中大兄皇子ではなく、軽皇子(孝徳天皇)が即位され、古人大兄皇子は自らに邪心がないことを証明するために出家されますが……
古人大兄皇子はまもなく謀反の疑いをかけられて討伐されますし、孝徳天皇もやがて皇極上皇・中大兄皇子と決裂され、孤立されることになります。
そもそも、この孝徳天皇について、日本書紀は、
仏法を尊んで神々の祭りを軽んじられた――生国魂社の木を切られたことなどがこれである。と、わざわざ紹介しています。
日本書紀の後半に見て取れるライトモチーフが、親外国・仏教勢力と、尊皇・敬神の勢力の対決の構図であることは、こちらで考察しましたが、この人物評は、孝徳天皇ご自身の御志が、中大兄皇子・中臣鎌足たちのそれとは微妙に異なっていたことを示唆してはいないでしょうか。
ちなみに孝徳天皇の御代、右大臣は蘇我倉山田石川麻呂大臣。
中大兄皇子はこの大臣の娘を妃に迎え、蝦夷・入鹿討伐の味方に引き入れた過去があります。
と同時に、倉山田石川麻呂の別の娘は孝徳天皇の妃にもなっているようです。
仏教を貴ばれた孝徳天皇と、功臣とはいえ蘇我系には違いない右大臣との関係は、勘繰れば勘繰れないこともないのかもしれません(事実、後に蘇我日向の讒言する所により、倉山田石川麻呂は誅殺されます。結果的には死後にその潔白が判明し、中大兄皇子は深く悔いられますが……一時はそれを信じた、ということは、何かそれらしい疑いは持っておいでだったのかもしれません)。
中大兄皇子が皇太子となられ、中臣鎌足が内臣として諸官の上にあったとはいえ、蘇我氏系豪族をはじめ、親外国勢力・仏教勢力の影響にはまだ予断を許さないものがあったのでしょうか……
いずれにせよ、中大兄皇子という、血統からも功績からも文句のつけようのない皇太子がおいでになったのですから、斉明天皇の重祚もまた、小泉政権の企てのごとき皇位継承者の「不足」などが理由であったわけではさらさらないことは、明らかであるはずです。
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追記:
ちなみに、欽明天皇の御代、仏教は直接的には朝鮮半島の百済からもたらされましたが、それ以降、高句麗、百済、新羅は、しきりに日本に使者を遣わし、朝貢してきています。孝徳天皇や斉明天皇の御代にもそれは同じで、いわゆる半島に都合の悪い歴史ですが……
斉明天皇の御代には半島で戦乱が勃発、六年には百済が滅亡。百済の難民は日本に殺到、救いを求め、これが後の白村江の戦いへとつながっていくわけです。
日本乗っ取りを企んだ蘇我氏たち仏教勢力≒親外国勢力という推測が当たっているとすれば、それはつまるところどのような存在だったのか……謎には違いありませんが。「歴史はくりかえす」と言いたい欲求は感じられるかもしれません。。
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